2018年10月22日

第108話「チコちゃんメモ魔大変身」

108.jpg

今回の遠距離介護ツアーは、思いもよらぬ豪雨災害に遭遇し、外に出ることもままならなかったので、家の中で、母チコちゃん(86歳)と二人きりで過ごす時間が多かった。
とは言っても、以前は5分ごとに話がループしていたのが、最近は3分ごとに話がループしはじめる母チコちゃんが相手だから、まともな話はできない。
いきおい、あれこれと注意することが多くなる。

●買い物に行く前に買い物メモを作っていけばムダな買い物が減るよ
●冷蔵庫の中に消費機嫌切れの食品があるよ
●ゴミ出しの前日に用意しておけば当日あわてることもないよ
●こげついたナベは捨てた方がいいよ
●お菓子ばかり食べてないでもっと野菜を食べた方がいいよ
●介護事業所をもっと利用した方がいいよ
●いつも使うカバンは同じ場所に置いておいた方がいいよ、等々。

これらをきいた後、だんだん母チコちゃん(86歳)は不機嫌になり「いつからおまえはそんなにおもいやりのない子になったんか?」とか「昔は優しいコじゃったのに…」などと言い始める。
面と向かってそれをきかされるムスコの身は、ちょっとつらいものがある。
まぁそれも3分後には忘れてしまい、本人はケロッとしているのが、ある意味救いではあるが。
しかし、そんな母チコちゃん(86歳)も、自分自身の物忘れ自覚はある。
ふと気付くと、居間のテーブルの上、冷蔵庫の扉、ベッドの横の棚、愛用のカバンの中、衣服のポケットの中などに、覚えておきたい内容を書いたメモ用紙が入っているのだ。
それらのメモには「このトシになってムスコに小言を言われるのが悲しい」とか「これも私の運命なのか」とか「こんなことなら、もういつ死んでもいい」等と記してある。
なにやら、悲劇のヒロインの気分になっているようだ。
これらのメモを見ながら、自分の失われている記憶を補完しようとしているのだろう。それは、それでいいのだが、メモを読んでまたムスコに対する感情を高ぶらせても困るので、発見したメモはすぐ処分することにしている。
しばらくすると、またしてもテーブルの上にメモ。
いただいた香典を子供が全部持って帰ったのでお返しができない」とある。
真実は、母チコちゃんがどこかにしまってしまい行方不明になっているのだが、いつのまにかボクと妹U子が持ち帰ったことになっている。あれこれ説明してもラチがあかないので、すぐにメモ用紙をまるめてポケットにつっこむ。ゴミ箱に捨てると、中をあさる可能性もあるので、帰京する時に持ち帰ることにする。
こうして遠距離介護ツアーを終え、H県M市をあとにするとき、メモ用紙を入れた紙袋の荷物がひとつ増えるのだった。
実際問題、荷物の重さ以上に精神的にちょっと疲れる。
少し休みたい…。
(つづく)
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年10月15日

第107話「初めての避難指示」

107.jpg

毎度の遠距離介護ツアーで、母チコちゃん(86歳)が一人で暮らすH県M市に来ている。
最近はH県M市を訪れるのがだんだん頻繁になり、同じ月に二度も来たりしている。
いったい今回が第何次遠距離介護ツアーになるのかもはや定かではない。
そんでもって、毎度お馴染みの想定外の出来事との遭遇である。
今までのいちばんの想定外は、父ハム夫くん(享年94歳)をミズムシ治療のため皮膚科に連れて行こうとしていた日の朝、急変して帰らぬ人となってしまったことだ。
今回の想定外の出来事も、それに匹敵するくらいのものであった。
それは、遠距離介護で滞在中のH県M市で豪雨災害による避難指示発令が出たことだ。
M市に来てからずっと連日の雨の日が続いていた。
そんな雨天でも、母チコちゃん(86歳)は歩いて数分のスーパーに毎日出かけていく。しかし、昨日は「経験した事のない大雨が降る」という天気予報だったので、介護事業所のクルマで送迎してもらった。
母チコちゃん(86歳)は、それが気に入らなかったようで、本日も「経験した事のない大雨が降る」というのに、この土砂降りの中を、なんといつもより早い時刻に買い物に行って、介護事業所のクルマが来る頃には、すでに買い物から帰宅していたのだった。
まだまだ自分は大丈夫なんじゃ!というアピールなんだろう。
この数日、朝から晩まで土砂降りだが、母チコちゃん(86歳)は耳が遠いので雨音がきこえないようだ。そのせいか連日の気象警報も全然気にしていない。
そんな中、突然の停電
まだ夕方で外も明るく、家の中も真っ暗にはならなかったが、一瞬ビビってしまった。あわてて、家中の懐中電灯をチェックすると、何個かあるもののどれも点灯しない。電池がなかったり、あっても液漏れしたりと使い物にならない。いくつかは電池は入っているものの、二本入りなら一本、四本入りなら三本しか電池が入っていないものがある。
母チコちゃん(86歳)にきいたら、「もったいないから外したんじゃ」とのことだった。
あわてて、お向かいの電気屋さんに乾電池を買いに行き、とりあえず補充しておいた。
1時間後、停電状態は終了した。
防災放送が、水道が出にくくなっているとアナウンスしている。
水の備蓄はあるのかと母チコちゃん(86歳)にきいたら、「そんなもんはない!」と言い切るのであわてて台所にあるヤカンやらナベに水を備蓄する。
こんなときのためにミネラルウォーターを買い置きしておいた方がいいよとすすめたら、「そんな何年も保存出来るような生水はいらん!」とこれまた高らかに拒否宣言。
そうこうしているうちにM市全域に避難勧告が発令された。避難所のアナウンスもされはじめた。それによると実家から徒歩15分程度のコミュニティセンターが避難所らしい。それをきいた母チコちゃん(86歳)は「そんな遠い所には行かん!このへんの避難所はウチの裏の中央病院じゃ!」と言い張るのだった。しかしその中央病院は30年以上前に移転して今は図書館になっているのだ。
グダグダ避難所のことで口論しても仕方ないので、電気も通じて水も出るうちに入浴することにした。風呂場の窓ガラス越しにも雨音が強くなっているのがわかる。
数分後、サッパリして風呂から出たら玄関で物音がする。何かモノでも飛んできたかと思ったら、ずぶぬれの母チコちゃん(86歳)が外から帰ってきたところだった、なんと元中央病院で現図書館に避難出来るか行ってみたとのことだった。その結果は、誰も避難していなかったということだった。避難所ではないのだから、誰も避難していないのは当たり前である。
数時間後、更に雨は強くなり、ついに避難勧告よりも深刻な非難指示が発令された。避難勧告が避難指示になると避難所も増え、前述の元中央病院で現図書館もそのひとつになった。ほらみろ、と自慢げな顔の母チコちゃん(86歳)だった。
不安な一夜が過ぎる。
結局、実際の避難はすることなく、翌日午後には非難指示も解除されたのだが、ほんと、父ハム夫くん(享年94歳)の急逝に匹敵するくらいの想定外の一夜であった。
母チコちゃん(86歳)一人の時に、このような状態になっていたらと想像すると、おそろしくなるが、案外平気で過ごすのかもしれない。一晩中ラジオとネットで情報を収集しつつほとんど眠れなかた息子とちがって、母はいつも通り高いびきで熟睡していたのだから。
時間と空間がうまく認識できなくなっている母チコちゃん(86歳)だが、それが功を奏して、どんな場面でも平常心でのぞめるのかも知れない。
それはそれでいいのではと思える、雨上がりの朝だった。
(つづく)
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年10月08日

第106話「初めての公証役場」

106.jpg

相続関連あれやこれや作業で、いろいろ調べていると「遺言」の二文字がよく出てくる。
父ハム夫くん(享年94歳)の場合、そんなものはなかった…いや、たぶんないと思う。
家中探しまわって遺言が出てこない場合でも、公正証書遺言というものがあるという情報に接した。
なんでも、公証役場というところに行けば、遺言の有無がわかるという。
コーショーヤクバ、その文字はどこかで見た事があるような気がするが、どこでみたかはわからない。
どうやら全国各地にあるようで、どこの公証役場でも、公正証書遺言の有無が確かめられるというので、さっそく最寄りの公証役場に行ってみた。
信用金庫の入っているビルの上階にそれはあった。
さっそく窓口に行き、あらかじめ用意していた戸籍謄本などの書類を提示して、父ハム夫くん(享年94歳)の遺言を検索システム照会申請する。
時間がかかるので、しばらくソファーに座って待つ事になる。
今まで、市役所やら法務局やら、いろんな窓口に出向いたが、ここ公証役場では、驚くべき対応があった。
なんと、スタッフさんがトレイにお茶を入れた容器をのせて運んできたのだ。ついでに飴もすすめられる。こんなサービスは初めてである。
金融機関のロビーで待つときも、信用金庫だと時々こういう対応があるが、お役所(なのか?)では初めてだ。このビルの階下が信用金庫だから、同様のサービスがあるのだろうか、よくわからないが、丁度のどが乾いていたのでありがたくいただく。
そうこうしているうちに、名前を呼ばれたのでカウンターに行く。
遺言結果システム照会結果通知書というA4サイズのペーパーを手渡される。
そこには、「見当たりませんでした」と記されていた。
前回の法務局での登記物件が「見当たりません」になったのに続いてまたしても、見当たりませんという結果である。
遺言はないだろうと思っていたので、この結果は予想通りであった。
また収入印紙を購入して何か手続きするのかと思ったら、その必要はないと言う事だった。
つまり、何も料金はかからないということだ。
そのうえお茶まで出してもらってちょっと申し訳ないなと思いつつ、もう生涯で二度と来ないであろう公証役場を後にしたのだった。
(つづく)
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年10月01日

第105話「初めての法務局」

105.jpg

次回の遠距離介護ツアーまでの間に、やることは本当にいろいろある。
いろんなところに行って、いろんな書類を用意していろんなことをしなければならない。
今、とりかかっているのが、これまで父ハム夫くん(享年94歳)と母チコちゃん(86歳)が住んでいた家と土地の相続手続き。
これはいつまでに手続きをしなければならないというものではなく、極端なハナシ固定資産税さえちゃんと払っておけば、何年ほおっておいてもとりたてておとがめはないらしい。
しかし、いつかはやらねばならないものなら、やってやろうじゃないかと相続手続きに挑戦してみた。
本来なら相続人である母チコちゃん(86歳)がやるべきものだが、それを肩代わりしてやるのもKAIGOの一環ではある。
被相続人と相続人の戸籍やら印鑑証明やら、例によって揃える書類が多く、これらは前回の遠距離介護ツアー中に、本籍のあるH県M市の市役所でとれるものはとっておいた。
しかし最終的に手続きをするのは市役所ではなく法務局である。
今まで法務局なるものに全く縁がなかったが、全国各地に出張所があるのを初めて知った。もちろんボクの住む区にもある。
まずは登記事項証明書なるものを取得するため、最寄りの出張所で初法務局体験をしてみた。
登記事項証明書とは、建物や土地の戸籍謄本みたいなもので、これを取得後、その内容と相続の形態に即して、登記申請書やら相続関係説明図を作成して提出すれば一件落着である。
手ブラでいくのもアレなので、手みやげ替わりに固定資産税納付書を持参して窓口に用件を告げた。
収入印紙を購入して、登記事項証明書交付請求書にペタンと貼付けて窓口に差し出す。
手渡されたのは、領収書ではなく、「収入印紙売りさばき証明書」というものだった。
待つ事しばし、呼ばれたのでカウンターに行くと、なんだか職員の様子が変である。どうも、固定資産税納付書の内容と、登記事項証明書の内容がちがうらしいのだ。
具体的に言うと、建物の2階部分の家屋番号が見当たらないのだ。
再度調べてもらい、出た結論は、2階部分が登記されていないというものだった。この2階部分は増築した部分で、未登記のまま現在まできたのだろうということだ。
未登記でも固定資産税がかかるのかと職員にきいたら、固定資産税は法務局の管轄ではないのでわからないが、固定資産税を徴収する部門は、職員が足で実地見回りしたり、航空写真などで確認して課税することもあるのだそうだ。税を徴収するオカミの執念を感じる。
次回の遠距離介護ツアーでH県M市に行った際に、未登記のものを登記して相続するのか、未登記のまま相続するのか、最終提出先のM市法務局に相談してみよう。
前途は多難である。
(つづく)
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年09月24日

第104話「日常生活が冒険」

104.jpg

四十九日法要後も、僕ひとり残って母チコちゃん(86歳)との短期同居をするつもりだったが、その翌日妻と一緒に帰ることにした。
この一年に六度に渡る遠距離介護ツアーの疲れなのか、ほとんど会話にならない無限ループ発話状態の母チコちゃん(86歳)とこれ以上過ごす自信がないからだ。
まだ父ハム夫くん(享年94歳)が存命だった頃と比べて、母チコちゃん(86歳)と過ごす時間は256倍の疲れを感じる。
時間と空間の認識に大混乱を起こしつつある母チコちゃん(86歳)の日常生活は、ある意味大冒険の毎日なのだ。
日常生活の冒険」という小説があったが、母チコちゃん(86歳)の場合「日常生活が冒険」なのだ。

の日常。
母チコちゃん(86歳)の一日は、仏壇の父ハム夫くんへの挨拶から始まる。
電池内蔵式のロウソクと線香だから、火事の心配はないと安心していたら、家中に線香の香りが漂っている。
どこからかマッチを持ち出し、自分で点火したようだ。マッチの燃えカスが落ちている。
マッチはどこから出してきたのか不明である。この家は、よくモノがなくなるが、どこからかいろんなものが出てくる家でもある。
カン!キン!カン!キン!耳の遠い母チコちゃん(86歳)は、おりんを激しく打ち鳴らす。
たぶん家の外にも聞こえているだろう。その姿と音量はまるでフリージャズのドラマーみたいである。

の日常。
スーパーの海老の広告に見入る母チコちゃん(86歳)。これまで海老アレルギーの父ハム夫くん(享年94歳)の手前、海老をガマンしていたのだそうだ。
立ち寄ったコンビニで冷凍海老ピラフがあったので、電子レンジで解凍調理して出したら、おいしそうに食べている。
これからは気ままな一人暮らしだし、コンビニの冷凍食品利用もすすめたが、それはどうやら難しかった。冷凍食品は自然解凍するものと認識しているのだ。そもそも電子レンジで解凍する感覚がない。じゃあ、何のためにかと問うと、「殺菌のためじゃ」と答える。
それで、母チコちゃん(86歳)がいつも買って来た握り寿司をいきなり電子レンジに突っ込む意味がわかった。生ものを殺菌しているつもりのだ。
テレビでは地元ローカル局のワイドショーをやっている。
中年の男性コメンテーターの顔に見覚えがあるなぁと思ってよく見たら、数十年前のアイドル歌手だった。今は地元でこのような芸能活動をやっているのかと、少しばかり感慨に耽るのだった。
あんまり面白くない番組なので、BSやらCSのチャンネルに切り替えてみるが、母チコちゃん(86歳)にはBSもCSもない。ただいたずらにリモコンをいじっている、そのリモコンも、どこかに置き忘れて、しばしば消えてしまう。

の日常。
寝室にはキチンと布団が敷いてある。
しかし、エアコンは冷房ガンガン、布団の下には電気毛布のスイッチが入った状態だ。暑いのか寒いのか、どっちなんだ?母チコちゃん(86歳)にきいても意味がわからない。
トイレの前にはコタツ板が立てかけてある。そうするワケをきいたら、トイレの窓から誰かが入って来そうだから、ということだった。
階段は転倒の危険もあるので、一階で眠るように言っても、頑としてきかずに二階の部屋に行く。
これも、一階は出入り口が多くて誰かが入って来そうな気がするからという理由だった。
他にも、台所の火のつけっぱなし、水の出しっぱなしもしょっちゅうである。
そのたびに注意すると「なんでこの歳になって小言をいわれるんじゃ〜」と怒る母。もっともではある。
しかし、日常生活がだんだん営まれなくなっているのも事実である。
それに朝昼晩問わず、永遠に続くわけのわからない会話の無限ループ。

翌朝、母チコちゃん(86歳)は眠っている間に猫にひっかかれたキズだらけの顔で、妻と僕が乗ったタクシーに手を振り、見送ってくれた。
まぁ自力で立って見送れるだけで、たいしたもんだと思う事にしよう。
第105話につづく
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年09月17日

第103話「手ブラで四十九日」

103.jpg

第六次遠距離介護ツアーのメイン行事である四十九日法要を明日に控えた夕暮れ時、妻が仕事を午前中で切り上げてH県M市までやってきた。
ボクだけH県M市に先乗りして、相続関連手続きなどあれやこれやをやりつつ、果てしない母チコちゃん(86歳)とのエンドレス会話に疲れはてていたので、助っ人妻が来てくれて心底ホッとした。
以下は妻とのボーッとしながらの会話。

妻「お疲れさん」
僕「うんホントに疲れたよ、父ハム夫くんがいた時の方がまだ楽だったよ」
妻「お義父さんはちゃんと論理的な会話ができてたもんね」
僕「うん、母チコちゃんの場合は支離滅裂の無限ループ会話だからね」
妻「まぁいろいろあったけどお義父さんをちゃんと送ってあげてよかったね」
僕「うん、まぁこれからどーなっていくかはわからないが一区切りはついたかな」
妻「明日着ていくワイシャツと靴と靴下もお義父さんのを借りて行くし、きっとお義父さんも喜んでるわよ」
僕「うん、明日の法要の会場も、その後の会食の場も妹U子がおさえてくれたから、あとは直接会場に行くだけだよ」

そんな時に妹U子からLINEで連絡があった。
妹「遺影お骨法名はどうする?」

おおっ、ボーッとしてすっかり忘れていた!
もう準備はすんだと安心して、このままでは手ブラで四十九日法要の会場に行くところだった。
手ブラといっても、グラビアのポーズではない。
そんなくだらないことを考えながら、明日に備えて遺影とお骨と法名の準備にかかる。
遺影は天井近くの場所に置いてあるので、明日やってくる妹U子の長身のセガレにまかせよう。
お骨はけっこう重いので、力自慢の妹U子にまかせよう。
法名は仏壇の中にしまってあるのを発見した。これは軽いので自分で持って行く事にする。
そんなこんなで、法要にやって来たのが坊守さんだったのを気にする親戚のオジサンもいたが、翌日の四十九日法要は無事にすますことができた。
次の行事は一周忌
その時まで喪服は実家に置いておくことにする。
リスが餌を隠してその後どこに隠したかを忘れてしまうように、母チコちゃん(86歳)はなんでもかんでもしまいこんで行方不明にしてしまうので、服の上に「これは息子の服です」と書いた紙を貼っておく。
果たして次にくるまでにこの状態のままかどうかは確信がもてない。クリーニングにでも出して、その事自体ををすっかり忘れてしまうかも知れない。
四十九日法要の翌日、妻は帰京するが、まだ僕はしばらくM市に残って、残務整理しつつ、母チコちゃん(86歳)との短期同居が続く。
第104話につづく
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年09月10日

第102話「連日の市役所通い」

102.jpg

前回の第五次遠距離介護ツアーから撤収して一ヶ月もたたないうちに、第六次遠距離介護ツアーにやってきた。
これまでは二ヶ月に一度くらいの頻度だったから、まだ前回の疲れがとれていない。
なんといってもH県M市は800キロの彼方である。移動するだけでも疲れる。
今回のメイン行事は、前回の遠距離介護ツアー中に亡くなった父ハム夫くん(命日は93歳の誕生日の三日前だが、享年は94歳)の四十九日法要だが、他にも様々な手続きもあるのでボクだけ一週間前に先乗りした。
その間、ほぼ毎日M市役所に通った。
なにごともルーティンワークになってしまうと面白みに欠けるので、市役所に行くのも、徒歩で行ったり、自転車で行ったり、バスに乗ったり、いろいろな手段を使ってみた。あまり気が進まない案件でも、目先を変えれば少しは気休めになるというものだ。
市役所に行って、最初にやらなければならないのは母チコちゃん(86歳)の印鑑登録関連。
これがないと、相続関連は何も進まないのだ。
ただ単に、実印にする印鑑を持って市役所に行けばよいと思ったら、そんなに簡単ではなかった。
登録申請の際、本人の運転免許証やパスポートなどの顔写真付きの官公庁が発行した身分証明書提示が必要なのだが、母チコちゃん(86歳)は持っていない。
そこでボクが代理人申請をすることになる。
実印と代理人の印鑑を持って市役所の窓口で申請したら、後日、照会書が母チコちゃんに送られてくる。
その照会書に母チコちゃんが署名して押印したものを、窓口に持参すれば一件落着…かと思ったらそうでもない。
代理人が行く場合は委任状が必要になるのだ。もちろん代理人の本人確認書類も必要である。
ふーっ、これでなんとか母チコちゃん(86歳)の印鑑登録が終了。
今後は交付された印鑑登録カードでいくらでも印鑑証明書の申請ができる。さっそく今後の相続関連手続きに使うために三通取得する。
考えるに、今後もいろんな場面で母チコちゃん(86歳)の身分を証明する必要が出てきそうなので、それに備えてマイナンバーカードを作ることにした。
その前に、通知カードの確認である。
母チコちゃん(86歳)にきいたら「そんなもんは知らん」と予想通りの返答だった。
またしても市役所に行き、マイナンバー通知カードの再発行申請をしたら、個人番号カード交付申請書なるものを渡された。
受け取った用紙にはQRコードがあり、これを利用すればスマホから申請できるとのことなので、iPhone SEでやってみることにした。
さっそくiPhone SEで母チコちゃん(86歳)の写真を撮る。これをQRコードでアクセスしてアップロードすれば手続き終了のはずだ。
iPhone SEのカメラで用紙のQRコードを読み込む…がっ、しかし!読み込めない!
iPhone SEじゃ古すぎてダメなんだろうか?いや、以前にこれより古いiPhone 5SでQRコードを読み込んだ記憶があるから、ハードの古さの問題ではない。
ハードじゃなければソフトである。
胸に手を当てて考えたら、iOSのバージョンに思い当たった。
iOS11以降なら標準カメラでQRコード読み取りができるのだが、ボクのiPhone SEのiOSは11以前であった。
それならiPhone SEのiOSをアップグレードすればいいようなものだが、現行のバージョンでないと動かないアプリをインストールしているのでそれはできない。
そんなわけで、今回の第六次遠距離介護ツアー終了後に自宅のMacでアクセスする事にした。しかしながら、申請後は母チコちゃん(86歳)のところに通知ハガキが届き、それを持ってまた市役所に行く手順である。
まだまだ市役所通いは続く。
そんなこんなで、連日の市役所通いで市役所滞在時間も長くなる。
いろいろ待つ間にロビーのフライヤやら何やらを見ているのも楽しい。来年には妖怪関連のミュージアムができるとか、地元出身のビジュアル系歌手のCDリリースのお知らせもある。
その歌手のビジュアルは妖怪にも負けないようなド迫力である。陰ながら、曲が大ヒットすることを祈ってみた。
第103話につづく
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年09月03日

第101話「2003年のゴミ出し」

101.jpg

毎回のように予想外の展開になる遠距離介護ツアーだが、今回ほどの想定外は初めてだった。
まさか、父ハム夫くんが93回目の誕生日を二日後に控えた朝に逝ってしまうなんて思いもよらなかった。
そんなわけで、これから独身生活をおくる母チコちゃん(86歳)を一人にして帰京するのは、後ろ髪を引かれる思いだが、いつまでもここH県M市に滞在するわけにもいかない。
いくら売れてないマンガ家でも、少しは原稿を描かねばならぬ。
とは言え、M市を離れる前にできることはやっておくのが、遠距離介護者の仕事だ。
まずは、たまったゴミを出しておくこと。
壁に貼ってあるM市のゴミ出し分別マニュアルで確認する。
これがまた細かく分類されていて、壁の図表を見てもよくわからない。
母チコちゃんにきいたら「まちがったゴミを出したら収集車はゴミ袋を置いて帰ってしまうが、そのうち持っていくよ〜」との大胆な発言。
分類も複雑だが、指定ゴミ袋も多種多様で、指定袋番号と袋の色で、これまた細かくわかれている。
なんとか指定のゴミ袋に分別したゴミを詰め込んで、ゴミ集積所に足を運ぶ。
集積ボックスの前に立つと、何か違和感がある。
ボクの持っているゴミ袋の色は赤色だが、集積ボックスの中のゴミ袋は全て水色だ。
これは何かがおかしいと感じ、もしかしたらゴミ出し表を見間違えたのかと、家までゴミ袋を持って戻る。
壁の表を見たが、確かにきょうは赤いゴミ袋の日だ。さらに表を凝視したら、右下の小さな数字が目に入った。
そこには、2003年版M市ゴミ分別表と記してあるではないか!
あわててiPhoneを取り出し、M市のウェブサイトのゴミ関連ページでゴミ分別表pdfをを表示してみたところ、なんと!壁の表と最新版の表の内容は、ほぼ同じではあるが、曜日や分別がビミョーに違っているではないか。
そういえば以前、介護所スタッフから、お母様がご近所とゴミの事でトラブルがあったみたいですときいたことがあった。2003年版のゴミ分別表を見てゴミ出ししたら、そりゃ問題ですがな。
母チコちゃん(86歳)の生活は、数十年前の段階でストップしていて、愛用する冷蔵庫の中には、前世紀の食品が入っていたこともあるから、それに比べれば新しいが、それでも2003年版である。
15年前の事など、母チコちゃん(86歳)にとっては、つい先日の事なのかもしれない。
このままにしておくわけにもいかないので、市役所に行って2018年版ゴミ出しマニュアル表をもらい壁に貼り、実家をあとにしたのだった。
新しい物事が覚えられない母チコちゃん(86歳)は、目の前に何か目新しいものがあると隠してしまう傾向がある。はたして、次回の第6次遠距離介護ツアーで実家にくるまでの間に、この新しい表がこのままあるのか。
第102話につづく
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年08月27日

第100話「父の用意周到」

100.jpg

急に逝ってしまった父ハム夫くん(92歳)だが、自分がいなくなった後の事を、生前にそれなりに用意はしていた。
寝室のヒキダシに「重要書類入れ」と記したファイルをしまっていたのだ。
几帳面な性格らしく、土地家屋関連書類や、年金関連の通知等が年代順にきちんと整理されていた。しかしボケはじめたこの2年くらいの分は新聞の広告や包装紙みたいなものがまざっていたのだった。
そういえば、亡くなる日の朝のこと。
ベッドに座ったまま、ボクに近くに来いと手招きをしている。
近付いて行くと、足元を指差す父ハム夫くん。
そこにはA4の紙が落ちていた。拾い上げてみると名刺をプリントしたものだ。
その昔、インパクなんてのがムリヤリ行われて、行政主催のパソコン教室なんてのがあった頃、ハム夫くんもこれに参加したことがあったが、その当時にサンプルとして作ったものかもしれない。
このパソコン教室で使われたのは国産のWin機だったのだが、ハム夫くんはその機種と同じものをパソコン教室終了後に購入した。それを後日知ったボクは、なぜ Macにしなかったんだよ〜と激怒したのを覚えている、その時のハム夫くんの鼻白んだ表情が忘れられない。
すまなったかなハム夫くん、Macのことになると瞬間的にあつくなってしまうんだよ、あの時はゴメン。
話は、足元の名刺用紙に戻る。
父ハム夫くんは、その用紙を手に持ちひっくりかえして裏側を指差している。
そこをよく見ると、なにやらボールペンで文字らしきものが何行か書いてあり、そのまわりが丸く囲われている。
やるべきことを書いて、それをまとめて囲って説明しているようだ。
しかし何が書いてあるかは判別不能だ。
ボクが頭をひねっていると、さらに足元を指差している。
そこにはティッシュペーパーが一枚落ちていた。
よく見ると、そのティッシュペーパーにもなにやらボールペンで文字らしきものが何行か書いてある。先ほどの名刺用紙と同じくそのまわりを丸く囲っている。
やはり何かを説明しているのだろう。
コレは何が書いてあるのか訊こうとしたその瞬間、父ハム夫くんは「わかったな?」といった表情でにっこりした後、ティッシュペーパーを顔に近づけてチーンと鼻をかんだのだった。
その後は、ティッシュペーパーを丸めてポイとそのへんに投げ捨てる。
今思うと、あれは遺言のようなものだったのかも知れない。
葬儀はこうやって、残ったものはこうやって分けなさいよ、と書いていたような気がするが、今となっては真相は不明である。
というわけで、初めての相続に右往左往しているのが現状だ。
なかなか手強そうだが、以前やりかけてそのままになってしまった成年後見人のチャレンジよりはなんとかなりそうではある。
まずは、相続関連特集のある日経マネーのバックナンバーでも探すことから始めるとしよう。
父ハム夫くん(92歳)は、葬儀の三日後が93回目の誕生日だった。
今後、父ハム夫くん(93歳)と記す事はない。
第101話につづく
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記

2018年08月20日

第99話「ソは相続のソ」

099.jpg

いずれは相続の手続きをしなければならないと思いつつも、面倒そうなので後回しにしていた。
相続関連手続きはいろんな書類をそろえたり、いろんな窓口に申請に出向いたりと、遠距離介護者にとってやっかいな問題なのである。
それよりも公共料金引き落とし先変更届けが先決である。
ガスやら電気やら水道が急にとまるようなことになったら大変だ。
まずはガスの引き落とし先の金融機関に出かけ、引き落とし先を父ハム夫くん(92歳)の口座から、母チコちゃん(86歳)の口座に変更したいと申し出た。
変更手続き伝票を渡され記入して一件落着…のはずが。
それでは今後の相続についてご説明します」と窓口のスタッフ。
これよりお父様の口座は相続終了まで凍結されます」と続いた。
えっ、まだ相続関連手続きは先にするはずだったのに、いきなりの展開である。
相続手続き依頼書なるものを手渡される。
相続に必要な書類一覧表もある。
それによると、亡くなった父ハム夫くん(92歳)の出生から死亡までの戸籍謄本一式が必要なのだそうだ。普通の戸籍謄本とは違うのだろうか?一式という事は、複数のものを揃えるのだろうか?
相続人全員の印鑑証明書も必要だ。
母チコちゃん(86歳)は印鑑登録そのものをしていないから、まずはこれからだ。
電気料金は他の銀行なのでそちらにも回ったが、書式がビミョーにちがうものの大筋では似たようなものだった。
水道料金引き落としは、ゆうちょ銀行なので、そこにも行ってみたら、他の銀行とは異なっていた。
相続関連ですと申し出たら「ゴシューショーサマデス」と窓口の年輩の郵便局員に言われて、ちょっと面食らう。
他の銀行とちがって、まず相続手続きに入る前に相続確認表というものを書く必要がある。これは被相続人と相続人との関係図みたいなものだ。それを窓口に提出すると、その時点で口座は凍結されるが、相続手続きはまだ始まっていない。
2週間くらいしたら、必要書類のご案内というものが郵送されてくるのだそうだ。そこに書かれてある書類を用意してゆうちょ銀行の窓口に提出する流れだ。その後に何も問題がなければ金券(窓口のスタッフは確かにこういったが、ちゃんとした正式名称は別にあるような気がする。金券だと、商店街の福引きで当たったみたいだしね。)が送られて来て、それを再度ゆうちょ銀行の窓口に持って行き、それでやっと払い戻しされるのだ。
ああ面倒臭い。
しかも残高が100万円以下と以上で手続き書類も違うのだそうだ。たぶん100万円はないだろうから、100万円以下の場合に使う「窓口即時払用」手続き請求書を受け取って帰る。
がっ、しかし!
通帳類を管理している妹U子に確認したら、100万円以上残高があるというではないか。
同じ郵便局に100万円以上の書類を再度もらいに行くのは恥ずかしいので、少し離れた別のゆうちょ銀行に行き100万円以上の書類を受け取る。今度のは「集中処理用」と記されている。きっと集中して処理するのだろう。
銀行関連はなんとかなりそうだが、ゆうちょ関連は今後も何か問題が起こりそうな気がする。少なくとも窓口に出向く回数は銀行よりは多い。
わずかばかりの相続関連手続きの経験で、今ワタクシは思う。
自分だっていつ何があるかわからない。
相続のことを考えると自分のゆうちょ銀行の口座はいずれは解約しよう。解約しないまでも100万円以下にしておこうと。
第100話につづく
(C)2018 ODAMANGA.com All Rights Reserved.
posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記