2017年12月15日

第61話「第三次遠距離介護まとめ」

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約二週間に渡った第三次遠距離介護ツアーも、介護認定訪問調査立ち会い、介護事業所との打ち合わせ、金融機関巡り、必要な支払い、各種手続き等々ほぼ片付き、終わりに近付いた。
あとは目につく細々とした雑事をこなすだけだ。
そんなこんなで、今回の第三次遠距離介護ツアーの反省をしてみる。
まずは全体の総括。
約二ヶ月前の第二次遠距離介護ツアーとの大きな違いは、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の、生活の質の低下、Quality of Lifeとは略称QOLってやつだ。
以前は、二人を遠くから見守ればよかったが、今回は常に二人に目配りしつつ、後を追いかけ手助けしなければいけない場面が増えた。
母チコちゃん(86歳)はますます時間を超越するようになり、冷蔵庫の中は期限切れの食品だらけだ。
父ハム夫くん(92歳)は空間も超越するようになり、ゴミを集積場に持って行かずに、近くに住む親戚のS子さんの畑に穴を掘って埋める姿を何度も目撃されている。
周囲のハラハラをよそに二人はケロッとしている。
ある意味、時空を超えて生きる父母は悟った禅僧のような境地かもしれない。
禅問答のような会話を、何度も何度も何度も…しても倦む事はない。
しかし、同じことをきく繰り返しに耐えられないこちらは悟れない。
自分の人間としての器の小ささを実感する。介護とは修行なのか。
そんなこちらの気持ちは全く気にせず、母チコちゃん(86歳)は、父ハム夫くん(92歳)を介護している気になっている。
例えると、以前は小学高学年の母チコちゃん(86歳)が、小学低学年父ハム夫くん(92歳)の世話をしているイメージだったが、今は小学低学年の母チコちゃん(86歳)が、幼稚園年長の父ハム夫くん(92歳)の面倒をみている感じだ。
今後は、幼児の母チコちゃん(86歳)が、乳児の父ハム夫くん(92歳)を介護するような流れになるのだろうか。あれこれ考えても仕方がないので、今は保留しておく。
第三次遠距離介護ツアーの新しい試みで一番の失敗は耳栓。
耳の遠い二人の爆音テレビ音対策用に持参したのだがあまり役に立たなかった。やっぱり100円ショップの耳栓じゃダメだったか。
MacBook Proを持参して仕事をする作戦は、まぁまぁ成功した、とはいっても、当初予定した2割くらいしか進行しなかったのは反省点だ。
と、反省点をメモっていたら母チコちゃん(86歳)が、先日の自分の誕生日の話を何度もし始めた。ハッピーバースデーの歌で、最後の名前の前に出て来る歌詞の意味がわからないというのだ。おそらくdearチコちゃんの部分のことだろう。発音と意味を教えてやったら「イヤー♪チコちゃん」だと思っていたと嬉しそうに言うのだった。ハッピーニューイヤーと混同していたのかも。横で父ハム夫くん(92歳)も、この会話が理解出来たのかどうかは不明だがニコニコしている。
まぁいろいろあったが、本人たちが全然悩んでいないんだから、遠距離介護者のボクがあれこれ反省したり悩んでもしょうがないなと考え、これ以上第三次遠距離介護の総括と反省なんてしないことにした。
(つづく)
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2017年12月11日

第60話「三食早寝付き介護生活

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父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の二人が暮らす、H県M市の実家の朝は早い。
二人とも季節を問わず日の出とともに起きているようだ。
父ハム夫くんの朝一番の仕事は、朝刊をとりにいくこと。
調子のいい日は新聞を広げて読む。
あんまり調子の出ない日は、広げないで1面だけを眺める。
調子が悪い日はゴミ箱に直行して、新聞を広げる事もなく広告ごと突っ込んでしまう。
その日が新聞紙段ボールなど資源ゴミの日だと、読まないままゴミ集積所に持って行くこともある。
そんな父ハム夫くん(92歳)なのに、休刊日には新聞はとりに行かない。
そこらへんは、妙にちゃんとしているのだった。
朝食は二人ともパン食である。たいていが賞味期限切れである。
それなのに米も炊く。
炊きたてのゴハンはおいしいのに、炊きたては食べない。冷凍して保存するわけでもない。いたずらに時間が過ぎ、冷たいゴハンになっていく。運がよければ、そのうちレンジでチンするが、なぜか茶碗にゴハンが入った状態でトースターに入れられていることもある。そのうちにひからびてゴミになる。
二人とも米には感心が深いようで、父ハム夫くんの口癖は「米炊くか?」である。ほとんど食べないのにね。
昼食はスーパーの弁当と総菜を買う事もある。
それが二人で食べるには多すぎる量でビックリする。
当然食べきれない。
残った食料は台所のあちこちを放浪して、残飯からやがて生ゴミになる。
夕食は、スーパーで買ってきた、これまた食べきれないほどの肉やら魚やらをフライパンで炒める料理のようなものを作る。野菜はほとんど摂らないようだ。いつ作ったのかわからない料理も食卓に並ぶ。
「こんなに食べきれないほど用意する必要はないんじゃない?」と母チコちゃん(86歳)に言ったら「食卓がいっぱいでないと寂しいんじゃ」とのこと。
そうか、食べるために並べているわけではないのか。
それでスーパーに行ってもあんなに大量に食材を買うのかと納得したのだった。
食材はともかく、調味料や油が古いのか、食べると気分が悪くなることも多い。
そうこうしているうちに日没を迎え、風呂に入る事もなく、眠る体制に入る二人。
以前は食後にテレビを見ていたようだが、それもほとんどない。気が向けば見る程度だ。
テレビの前の二人を観察していると、ドラマはストーリーの流れが理解出来ていないようだ。
ニュースは見るが、いつどこで起こったどんなニュースをなのかはわかっていないようで、ただボーッと眺めているだけなのだ。
こんな一日が終わり、早ければ午後6時消灯で床につく父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)だった。
遠距離介護者として実家にやってきたボクも、こんな生活リズムに合わせるしかない。
正直なところ、とても精神的に疲れる。
肉体的にも、出された食事におびえながら食べていて、お腹の調子も悪い。
食器もたくさんあるのに、欠けたり不揃いで、まともなものが少ない。箸も以前はちゃんとしたものが沢山あったはずなのに、なぜかワリバシを何度も洗って使っている。
もう生活のすべてが崩壊しつつあるようだ。
それにしても、こんなに早い時刻には眠れないよ…。三食早寝付き介護生活の夜は、まだまだ更けない。
(つづく)
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2017年12月08日

第59話「夫婦漫才ダブルボケボケ」

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遠距離介護生活もスタートして約半年。
父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の二人は、順調にボケ度が進んでいる。
物忘れが激しいのはもちろん、日頃の行動もドンドン変化している。
第三次遠距離介護で実家に滞在して驚いたのが入浴問題だ。
どうも二人ともここしばらく風呂に入っていないようなのだ。
風呂が壊れたのかと調べたらそんなことはなかった。
こういう状態になったらよくあることらしいのだが、風呂に入ること自体が面倒なのか、それとも他に原因があるのか、二人にきいてもわからない。
二人の生活空間では、お風呂場はあまり重要でないのかもしれない。
まぁ、風呂に入らなくても死ぬ事はないだろうと、無理矢理考える事にする。
次に洗濯問題。
なんだか知らないが朝から一日中洗濯をしている。
まぁ洗濯機が使えるからいいとしよう。
ちゃんと干す事もできる。
そして1時間後、まだ乾いていない洗濯物を取り入れ始めるのだった。しかたないので、生乾きの洗濯物を再び干す遠距離介護者のボクでした。なんだかむなしい作業だ。
二人の生活で、時間の流れは以前とはちがうのだろう。
まぁ洗濯物が生乾きでも死ぬ事はないだろうと、無理矢理考える事にする。
少し手があいた母チコちゃん(86歳)のお決まりの話が始まる。
それは「病院で首を切られて血をとられる検査をされそうになった」というもので、一日に何度も何度も話すのが日課だ。これの真相は、病院で首のエコー検査と、血液検査をしたことがゴチャマゼになった結果のようだ。
父ハム夫くん(92歳)もボクに話しかける。
「いつ来たんじゃ?」と。しばらくすると「いつ帰るんか?」と。
このパターンが一日に数回繰り返される。
二人のこの会話パターンは今日で何度目なのかと、心の中で正の字を書くのだった。
介護とは同じ話を何度も聞く事なり!なんてフレーズが脳裏をよぎる。
この状況に耐えることが、果たしてボクの今後の人生に役に立つ事があるのだろうかと考えてみる。
もしかして将来、共謀罪を適用され何かの冤罪で捕まり、連日の執拗な取り調べを受けた時に、父母の無限ループ会話に比べればどうってことないかと思えて耐えられるかもしれないなァ、などとバカな事を考えた。
そうこうしているうちも二人の無限ループ会話は続く。
一回ハナシが終わるごとに心の中に正の字を書いていくが、正の字が四つ以上になった頃には、さすがにココロが折れてくる。
それでも、なんだかんだで一日が終わる。
しかし、次の日になると、再度同じようなことが繰り返されるのだった。
昔読んだSF小説で、朝起きると昨日と同じ一日がまた繰り返される、というものがあったが、まさにそれに近いものがある。
きょうも父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)による夫婦漫才ダブルボケボケのネタにつきあう一日がスタートした。
歩けるだけでOK!
話せるだけでOK!
生きてるだけでOK!
そう思うしかない遠距離介護者であった。
第60話につづく
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2017年12月04日

第58話「カレンダーババー♪」

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母チコちゃん(86歳)は、物忘れがはげしい
今はまだ自分が物忘れをする自覚を持っているが、このペースでドンドン進行すると、そのうち物忘れが多いということも忘れるようになるのかもしれない。
家の中では、常に物忘れが気になるようで、何かを探している。
それはカバンだったり、メガネだったり、猫クンだったり。
たいていの場合、それら探す対象はすぐ近くにあることが多い。
「ヤンヤン(猫の名前)はどこじゃ?」とキョロキョロする母チコちゃん(86歳)の足元に、ヤンヤンがうずくまっている事もよくある。
そんな状況だから、母チコちゃん(86歳)はカレンダーに忘れてはいけないことなどをメモしている。そこで、母チコちゃん(86歳)をカレンダーババーと命名した。元ネタはカレンダーガールである。ニール・セダカのね♪
病院に行く日は、カレンダーの数字を大きく丸でかこんで忘れないようにしている。
ボクが「これなら病院に行く日がすぐにわかっていいね」と母チコちゃん(86歳)に言うと、「いつ行くんか?」との返答。
カレンダーにシルシはつけたものの、関連がうまくいっていないようだ。
「でも自分でカレンダーに記したのに…」とボクが言うと、「誰が書いたんか、ワタシは知らんよ」と母チコちゃん(86歳)。
カレンダーには予定だけでなく、ちょっとした日記風なコメントも書いてある。
脳トレ教室に行った日は、物忘れに関して考えるところがあったようで「だんだんアホになっていく自分が悲しい」と記していた。
今回の第三次遠距離介護ツアーで、ボクが実家に到着した日には「息子がひさしぶりに来てうれしい」とも。久しぶりといっても、前回の第二次遠距離介護ツアーから二ヶ月しか経ってない。20年前のことはよく覚えているのに、二ヶ月前のことは忘れているのか。
ボクが第三次遠距離介護ツアーを終えて帰京する予定の日には「息子が帰るのは寂しい」と記してある。
ちょっと泣けるね。
第59話につづく
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2017年12月01日

第57話「アド街ぶらぶら介護」

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介護生活でのトラブルのひとつに、運転免許証問題がある。
高齢になったり、認知症になったりした人がクルマを運転して事故につながる可能性だ。
我が家の場合、母チコちゃん(86歳)は元々運転免許はなかったし、父ハム夫くん(92歳)も80代のうちに免許証は返上している。
80歳を過ぎてからの父ハム夫くんの運転は、同乗している時に感じた事だが、ブレーキのタイミングが一瞬遅くなっているし、交差点での視界が狭まっているように思えた。こちらから返上を提案する前に、自ら返上してくれたので、この問題に関してはメデタシメデタシなのだった。
そして今、ボクの遠距離介護生活が始まった。
そこで気がついたのが、実家に滞在中のアシがないのだ。
父ハム夫くんが乗っていたセダンは免許返上に伴い、クルマで1時間の所に住む妹U子が譲り受け、現在我が家にクルマはない。
以前は50cc原付もあったようだが、今はそれもない。パンクした自転車があるだけだ。
市内循環バスもあるが、経路がよくわからないので、基本的には徒歩になる。
まぁ一日一万歩のウォ−キングがてら歩くにはちょうどよい面積の土地ではあるのだが。
実は、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が住んでいるH県M市のことを、ボクは良く知らない。10代の頃数年住んだだけで、それから数十年経過しているのだから、ほとんど土地勘はないに等しいのだ。
そんな事を、数少ない昔からの友人で、現在M市に住んでいるココナツ君に話したら、彼のBROMPTONを貸してくれることになった。BROMPTONとはフォールディングバイクのことだ、平たく言うと走行性能良好折り畳み小径自転車。彼とボクはBROMPTON愛好者つながりでもあるのだが、そういえば自分のBROMPTONにも1年くらい乗っていないなァと気付く。
さっそく乗って街に出てみる。
これが思いのほか気持ちよかった。知らない街をポタリングする気分で、ぶらぶら走るのが楽しい。次回の第四次遠距離介護ツアーでは、自分のBROMPTONを輪行袋に入れて持参しようかなどと、介護とは全然関係ないことを考える。
グルっと街を一周したら、ユニクロ、ミスド、マクド、すき家、モスバーガー等々全国どこにでもある店が、ここH県M市にもある。しかしスタバもタリーズもない。純喫茶系がしぶとく生き残っていて、カフェ系の波にものみこまれなかったようだ。それもまた楽しからずや。
の〜んびりと木漏れ日を浴びつつ、Tシャツと短パンにサングラス姿でBROMPTONに乗る姿は、とても介護生活者とは思えないだろう。せっかくだから、その姿を iPhone SE で自撮りして妻にLINEで送る。全く介護の悲壮感のない画像なのだった。
第58話につづく
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