2018年06月18日

第90話「初めてのショートステイ」

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H県M市の実家で暮らす父ハム夫くん(92歳)のショートステイ挑戦がいよいよはじまった。
息子としては全面的に応援したいが、その現場に立ち会えないのが離れて暮らす遠距離介護者の弱みである。
しかし、どんな様子なのか非常に気になる。
父を世話しているつもりになっているが、その実態は何もしていない母チコちゃん(86歳)に電話できいても、ちゃんとした状況説明はできないから無理である。
実家の隣に住んでいる親戚のS子さん(75歳)や、ケアマネや、ショートステイのスタッフからの報告を総合して判断するしかない。
そもそもショートステイとは何か?
漢字で書くと、短期入所生活といったところか。
今回のショートステイ先は、同じ市内にある、サービス付き高齢者向け住宅である。略称「サ高住」。介護業界ではさらに略してサツキ(サ付き)というらしいが真偽は不明である。
その「サ高住」に、1泊2日の日程で過ごすのが今回のショートステイだ。
午前10時頃にクルマで家まで迎えに来てくれて、翌日の午後4時頃に家まで送ってくれるスケジュールだ。
1日目。
午前中はどこからも連絡はない。
デイサービスの時も、父ハム夫くん(92歳)が行くのを拒否した場合や、行っても帰ると言い出したときなど、何か問題があった時しか連絡はなかったから、何も連絡はないということは順調に進んでいるのだろうと楽観的に考え、こちらからも連絡はしなかった。
夕方、ケアマネから連絡があった。
それによると、昼食は摂らなかったが夕食は摂ったようで、新聞を読んだり、窓から外を眺めたりして過ごしたということだった。トイレ誘導に入浴は拒否しているらしい。
夜になって、実家からクルマで1時間のところに住んでいる妹U子から連絡があった。
父ハム夫くん(92歳)のことが心配で、ショートステイ先のサービス付き高齢者向け住宅に電話して様子をきいたらしい。ハム夫くんが出された食事に手をつけてなかったことが気になったようだ。ここのところ、食べ過ぎで太り気味の父ハム夫くんだから、1食くらい抜いたって大丈夫だよというボクに、妹U子は不満そうである。
なんだかんだあったようだが、1日目からカンシャクをおこして帰ってしまうという最悪の状況にはなっていないようである。
2日目。
夕方、ショートステイ先のサービス付き高齢者向け住宅スタッフから連絡。
二日目は食事もちゃんと摂ったそうで、無事に送り届けたという報告だった。
これは、初めてのショートステイとしては大成功ではなかろうか。もしかしたら、1日目のお迎えのクルマに乗るのを拒否するのではとも思っていたし、仮にうまく現場についても途中で帰ると言い出さないかと心配していたので、この結果は万々歳である。
ここで問題になるのが、父ハム夫くんがショートステイ中に、実家で一人になってしまう母チコちゃん(86歳)である。
隣に住む親戚のS子さん(75歳)から、コレに関して報告をいただいた。
それによると、母はショートステイに関して事前に説明を受けていたにもかかわらず、全く理解していなかったそうだ。昔のことは覚えていても、新しいことは5分後には忘れてしまう昨今だからしかたないことではあるが。
様子をうかがいにS子さんが家を訪ねて「今夜はハム夫くんはお泊まりよ」と言っても、母は「そんなことは聞いてない」と言っていたそうだ。
再度、様子を見に行った時は「お父さんはいつ帰るんか」と心配していたとのことだ。
今後のショートステイ関連の問題は、父ハム夫くん(92歳)ではなく、母チコちゃん(86歳)かもしれないなァと考え込む遠距離介護者なのだった。
(つづく)
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2018年06月11日

第89話「合鍵にご用心」

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第四次遠距離介護ツアーから無事に生還して数日がたったある夜のこと。
父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が暮らすH県M市の実家の隣に住む親戚のS子さん(75歳)からLINEで連絡があった。
それは、もう夜9時を過ぎているのに一階の電灯がつきっぱなしで、大音量のテレビの音が家の外にも洩れ出し、エアコンの室外機も動いている、というものだった。
普段は、早ければ7時過ぎには消灯してしまう二人の暮らしだから、これはちょっと異常である。
夕方には定期巡回随時対応型訪問介護看護事業所のスタッフが訪れているはずだから、もし家の中で倒れていても、まだ数時間のはずだ。
S子さんが固定電話に電話しても反応がないという。
消灯後は、電話の子機を持って母チコちゃん(86歳)が2階に上がるのが日常なのだが、二階に灯りはついていないらしい。
こんな時のために、S子さんには合鍵を預けてある。
玄関のカギをあけて中に入ろうとしたところチェーン錠がかかっていて入れず、猫クンが出てきただけだったそうだ。
裏口に回って入ろうとしたらカギが合わなくて、ドアがあかなかったとS子さんは言う。この裏口の合鍵は、先日の第四次遠距離介護ツアー中に、母チコちゃん(86歳)が持っていた裏口のカギをコピーして渡しておいたものだ。なぜカギが合わないのかわからない。
S子さんに「このカギでちゃんとあくか確認した?」と問われるが、疲れがピークの第四次遠距離介護ツアー終盤に合鍵を作ったので、そのへんの記憶が曖昧で、確証がない。
そういえば、もうひとつの裏口の合鍵を定期巡回事業所に渡していたことを思い出した。この時はスタッフがドアを開けるのを確認したのをはっきり覚えている。
S子さんにそのことを話したら、24時間対応の訪問看護ステーションに連絡してみるとの提案があった。第四次遠距離介護ツアーからの撤収時に、受付電話番号の記載された用紙のコピーを渡しておいたのだがその番号はスマホに登録してあるという。なんというS子さんのナイスプレー。
S子さんが訪問看護ステーションに連絡したら、合鍵を持って1時間以内にやってくるという。なんとか光明が見えてきた気がする。
約1時間後。
訪問看護ステーションのスタッフとS子さんが、合鍵で裏口から室内に入ったら、父ハム夫くん(92歳)が大音量のテレビの前に座っていた。
いつもより遅くまで起きて、テレビを見ているだけだったのだ。大音量は、耳が遠いのでボリュームを最大にしていただけだった。
しかし、母チコちゃん(86歳)の姿はない。
こちらは、S子さんが二階に上がってみたら大イビキで熟睡していたそうだ。
何故電話に出なかったのかはすぐに判明した。
その夜に限って、母チコちゃんは固定電話の子機を二階に持って上がるのを忘れていたのだ。
あっけない一件落着だったが、訪問看護ステーションの24時間対応システムがちゃんと動いていることが確認できてよかったといえる。
今回は大事にはいたらなかったが、いつ何が起こるかわからない父母の生活だから、いざと言う時の予行演習と思っておくことにする。
一夜明けて、翌朝。
S子さんが、二人の様子を見に行くと、二人は何事もなかったように、朝食を摂っていたそうだ。
「昨夜はたいへんじゃったね」とS子さんが声をかけても反応がない。なんと二人とも昨夜の事件を忘れているのだった。
まァ、たいへんな事は忘れた方が精神衛生上はいいかもしれないから、二人にとっては、これでいいのかも知れない。
数日後、S子さんが持っていた裏口の合鍵でドアがあかなかった原因がわかった。
この日実家からクルマで1時間のところに住んでいる妹U子が実家を訪れ、母チコちゃん(86歳)の持っているカギを確認して判明したのだ。
母チコちゃん(86歳)は裏口のカギを2本持っていて、1本はたしかに裏口のカギだが、もう1本はそうではなかったのだ。訪問看護ステーションに渡したのは、前者のカギをコピーしたスペアキーで、S子さんに渡したのは後者のスペアキーだったのだ。
最後に残った謎は、裏口のカギだと思って母チコちゃんが持っていたカギはどこのカギなのかということだ。
ものごとを整理して説明出来る能力はなくなっている母から、真実を聞き出すのは無理であろう。
これに関して、遠距離介護者のできることはない。たぶんこの謎は永遠に解けない。
第90話につづく
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2018年06月04日

第88話「定期巡回随時対応型訪問介護看護スタート」

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新ケアマネの暫定プランにしたがって、わが父ハム夫くん(92歳)の介護生活は変わりつつある。
介護用品レンタル、デイサービスに続いて、テイキジュンカイズイジタイオウガタホウモンカイゴカンゴのサービスをうけることにした。
漢字で書くと定期巡回随時対応型訪問介護看護だ。
長いので略すとテイジュン(定巡)。
要するに定期巡回随時対応型訪問介護看護事業所のスタッフが定期的に巡回訪問して介護と看護をするサービスである。
具体的には、朝と夕方に看護師さんがやってきて検温と血圧測定する。
測定結果も今まではノートにボールペンで記入していたが、これからはスマホのアプリで記録して主治医と共有していくとのことだ。スタッフが持っているスマホは全部アンドロイドだったからiPhone版アプリがあるのかどうかはわからない。
最初にやってきたスタッフは若い男性だった。
初対面のスタッフに対して、父ハム夫くん(92歳)は素っ気ない態度をとる。しかし、そこはプロだ、いつのまにか会話を始めている。
男性スタッフは「ハム夫さん、いろいろな経験を、僕たち若い者にもいろいろ教えてください」などとヨイショしているようだが、父ハム夫くんは満更でもなさそうだ。
その次の回にやってきたのは、女性スタッフだった。
マスクをしているので表情がよくわからないが、そんなに若くはなさそうだ。といっても父ハム夫くん見ればまだまだ若い部類に入る。
このスタッフは「これからよろしくお願いします」といいながら手を差し出す。父ハム夫くんもつられて思わず手を差し出し握手なんかをしている。
検温と血圧測定だけでなく、着替えや衛生面の管理サービスもあるようだ。
これなら父ハム夫くん(92歳)の健康状態は、少なくとも現状よりはよくなりそうである。
これまでは母チコちゃん(86歳)が面倒を見ていたのだが、その実態はオモラシをした父ハム夫くん(92歳)を罵りブツブツいいながら洗濯するだけというもので、積極的に紙パンツをはかせるでもなく、お尻の引っ掻き傷の軟膏を塗るでなく、なかばほったらかしであった。
事業所のスタッフに、軟膏の入った袋も手渡したら「こんなのも入ってましたが」と言われた。軟膏と一緒に同じくらいの大きさのチューブが入っていた。よく見ると母チコちゃん(86歳)のハンドクリームのようだ。チューブつながりでなんとなく袋に入れたのだろう。どうしてこんなもの入れたの?ときいたら、例によって「お父さんが隠したんじゃ」のオチだ。
ことほどさように、母チコちゃん(86歳)の言動と行動も、日ましにあやふやになっている。
天気の話などのどーでもいー話題なら、何の問題もなく会話が成立するのだが、実務的なことになると全く話にならなくなっている。
父のことも母のことも気になるが、そろそろ帰京する時が来た。
帰る前に業者から渡された、24時間対応の訪問看護ステーションの受付電話番号を書いたA4の紙をコピーして、電話の親機と子機のところにはっておく。
何かあったらいつでもここに電話するんだよ、と母に言っておくが、たぶんしないだろうなァと思う。
念のためコピーした紙を、実家の隣に住む親戚のS子さん(75歳)にも渡しておく。
前回の第三次遠距離介護ツアー撤収時に、実家の玄関を出る時は、父母が外まで出て立って見送ってくれたが、今回の第四次遠距離介護ツアー撤収時にはもうそれもできない状態だった。
父は居間でテレビを見ている。
母は廊下をフラフラ歩いている。
次回の第五次遠距離介護ツアー撤収時にはどうなっているのだろうか、と思いつつ帰路についたのだった。
第89話につづく
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2018年05月28日

第87話「デイサービス始末記」

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前回に続き、デイサービス関連のオハナシ。
獣医の、わが父ハム夫くん(92歳)には動物関連がいいんじゃないの、という短絡的発想で、ヤギのいるデイサービスを利用することになった。
最初から1日滞在はむずかしいかもしれないので、まずは短時間のお試しデイサービスと称して、ボクも同伴してデイサービス事業所に向かったのだが、迎えのスタッフが道を間違えるアクシデントがあり、到着した時には既にプログラムが始まっていた。
室内には10名くらいの男女半々くらいの参加者が席についている、
ホワイトボードの前には男性スタッフが立ち「今日は何の日でしょ〜?」とよびかけている。
なんとなく参加者が反応するものの盛り上がりはない。
ちょっと間が空いたところで、スタッフによる父ハム夫くん(92歳)の紹介があり、ホワイトボードに名前が大書される。またしても参加者の反応はあまりない。父ハム夫くんも無表情で椅子についたままだ。
まぁここまで来たということで、とりあえずは第一段階クリアといったところか。
ボクは他のスタッフとデイサービス契約について打ち合わせのため別室に移る、
30分後、スタッフがかけよってきて「お父様が、帰りたいとおっしゃっています」と言う。
あわてて玄関付近に行くと、父ハム夫くんが怒りの表情で憮然としている。1時間もたずにガマンの限界にきたのだろう。
そのとき車椅子の男性が近寄ってきて、父ハム夫くんの名をよんでいる。どうやら昔の仕事関連での知人らしい。今はここに通われているようで、父ハム夫くんも顔見知りがいるほうが今後は来やすいかもしれない。
しかし父ハム夫くんは何も反応せず、ただただ帰りたいというばかりだ。
しかたないので、この日はそこで帰宅することにした。
外に出てクルマに乗り込む前に、スタッフが駐車場の先を指差し「あそこにヤギがいるので、見に行きましょう」と誘うが全くの無視。ヤギ応対作戦は失敗したようだ。
帰りのクルマの中では「最初はいやがってもその後は喜んで通われる方もいますよ」とか「慣れたらお食事や入浴もされると思いますよ」などとスタッフの希望的観測をききながら無言のボクと父だった。
一週間後。
こんどは、お試しではなく正式にデイサービスに行く初日だ。
もちろんボクは同伴せず、父ハム夫くん(92歳)は一人で行くのだ。
迎えが来る前にあれこれチェックをしていたら、玄関先に置いておいた着替え等を入れたデイサービス用バッグが見当たらない。母チコちゃん(86歳)にきくと、最近の彼女の定番である「お父さんが隠した」という返答があった。最近、母チコちゃん(86歳)は自分に関係ないものはどこかにしまっておく傾向が顕著で、今回も家中をいろいろ探したら押し入れの奥にデイサービス用バッグがつっこんであった。
午前9時過ぎにやってきた迎えの女性スタッフが、クルマに乗せようとするが、その前に靴をうまく履かせられなくて苦労する。それでもクルマに乗り込みなんとか出発したのを見送ってひと安心する。
久々にハム夫くんの介護から解放されてゆっくりできそうだ。
自転車で5分くらいのファミレスに行き、ドリンクバーでしばし休憩。
10時半頃、ケアマネから「体操をしたあと、お父様がどうしても帰りたいとおっしゃってますので送っていきました」と着信があり、あわてて家に帰る。
父ハム夫くん(92歳)はすでに居間でなにごともなかったようにテレビを見ている。
というわけでデイサービス初日は早退という結果であった。
一週間後。
第二回目のデイサービス。
迎えのクルマが来ても乗車拒否をする父ハム夫くん(92歳)。
あんなつまらん体操なんかしたくない!」と怒りまくっている。スタッフもあきらめて引き下がるしかなかった。
デイサービスに、だんだん慣れてくるはずが、回を追うごとに拒否反応が激しくなる。
そもそもヤギで関心を引かせようとする試み自体が子供だましじみて間違っていたような気がする。
その後、父ハム夫くん(92歳)は二度とデイサービスに行くことはなかった。
第88話につづく
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2018年05月21日

第86話「ヤギとデイサービス」

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第四次遠距離介護ツアー中にセッティングした、わが父ハム夫くん(92歳)の要介護認定区分変更訪問調査に立ち会った。
日頃はボーッとしていることが多いハム夫くんだが、対外的な面では妙にシャキッとしている。前回の調査でも、訪問者にねぎらいの言葉をかけたりしていたくらいだ。
しかし今回の調査員の「今日は何月何日ですか?」の質問に対して「そんなことはどーでもえー」と答えている。さっきまで新聞を読んでいて「今日は○月○日じゃ」と言っていたのに。
その他の質問も途中からさえぎって「もーそんなことはせんでもえー」と怒り始める。そしておきまりの「もーどーせすぐ死ぬんじゃ、よけいなことはしなさんな」と調査員を追い返そうとする始末だ。
こんな調子だから3週間後くらいに判定される認定結果は、いいはずがない。少なくとも現状の要介護1よりは重くなるだろう。
それまでは新ケアマネさんが立ててくれた暫定プランに沿って介護サービスをうけることにする。
介護用品レンタルに次ぐ介護サービス第二弾は通所介護、いわゆるデイサービスというアレだ。
とはいってもその実態はよくわからない。
ボディに○○デイサービスと書かれたクルマが町中をよく走っているが、実際どんなことをしているのだろうか。
自ら進んで行き楽しむタイプの人もいれば、無理矢理連れて行っても拒否するタイプの人もいるらしい。はたして父ハム夫くん(92歳)はどちらだろうか。大体の想像はつくがダメモトで行ってみることにする。いきなり一人で行くのはハードルが高そうなので、最初はボクも同伴してお試しデイサービスということになった。
さて、その当日。
デイサービスに行く通所介護所からの迎えのクルマがやって来た。
出かけることに対して抵抗するかと思ったら、父ハム夫くん(92歳)はなにごともないようにクルマに乗り込んで行く。あわててボクもクルマに乗り込む。急なことでまだ出かける準備ができていなくて、iPhoneを部屋に忘れてきたのに気付き車外にでようとしたらドアがあかない。迎えの中年女性スタッフが外からドアをあけながら「安全のためこのクルマは内側からドアはあかないんです」と教えてくれる。さすがは介護業者のクルマであるなァと感心する。
現場に向かう道すがら、スタッフさんは運転しながらきょうのデイサービスについてレクチャーしてくれる。
これから行くところには、なんとヤギが数頭飼われているとのこと。元獣医さんだった父ハム夫くん(92歳)なら動物がいるほうがいいのではと、新ケアマネさんがここを選んでくれたのだ。
ヤギが次々と死ぬので獣医さんに往診してもらいたいんですよ〜」とかなり強引な設定をスタッフさんは語りかけるが、父ハム夫くん何も答えず無視して車外の景色を見ている。
そうこうしているうちも、スタッフさんの携帯電話に着信が何度も来る。その都度、運転しながら応答しているのだが、それでいいのだろうか。
こちらの視線を感じたのか「運転中の携帯電話でウチのスタッフが何人も交通取り締まりで捕まったんですよ〜アハハハ〜」と明るく笑うのだった。
「アンタも捕まらないようにね」と心の中で思っていたら、彼女の口からさらに衝撃の発言があった。
「あっ、おしゃべりしすぎて曲がる道をまちがえたみたいです〜」といいつつクルマを走らせる。
父ハム夫くん(92歳)のデイサーサービスは、お試しの段階から文字通り前途多難である。
第87話につづく
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2018年05月19日

【特報】Kindle版KAIGO日和・第1巻リリース!

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Kindle版『KAIGO日和』第1巻の公開がスタートしました!
ある日突然、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の遠距離介護に直面したマンガ家のボクが、驚きあわてふためき、あれこれ考え、だんだん現実を受け入れていく過程を綴った、愛と涙と感動の、ゆるゆる介護ブログ『KAIGO日和』の一部を、大幅に加筆修正した絵と文です。
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2018年05月14日

第85話「二人セットからソロ介護に」

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東京から800キロ離れたH県M市で暮らす、わが父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の遠距離介護がはじまって9ケ月がたった。
当初は、二人をセットとして考えていたので、それぞれにケアマネをつけるよりも一人のケアマネのプランでいったほうがいいのではということになり、小規模多機能型居宅介護事業者と契約した。
この助言をしてくれたのは、地域包括支援センターの社会福祉士のTさんだったが、今回は彼の助言は受けられない。
彼からは先日、地域包括支援センターから突然解雇されたと電話があったのだ。父母の今後も気になるが、彼の今後も気になる。一体なにがあったのだろうか?この遠距離介護生活が始まって以来の一番の謎である。
それはさておき、この9ヶ月で二人の状況も変化したので、介護方針をそろそろ見直してもいい頃ではある。
そこで考えたのが父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)をセットで考えるのではなく、ソロとして扱うことだ。長く一緒に活動していたバンドのメンバーがソロ活動を始めるようなものであろうか。
まずは、これまでより手がかかるようになってきている父ハム夫くん(92歳)が、もっと多様な介護サービスが受けられるようにすべく、区分変更申請をする。要介護認定訪問調査も、今回の第四次遠距離介護ツアー中にできるように手配した。
母チコちゃん(86歳)は今までのケアマネさんでいいとして、父ハム夫くん(92歳)対応の新しいケアマネさんをつけてもらうことにした。
さっそく顔合わせをして暫定プランを作ってもらう。
●通所介護(いわゆるデイサービス)
●ショートステイ(一時的施設入所)
●定期巡回訪問介護看護
介護用品(レンタル&購入)
以上の4本柱が中心である。
まずは介護用品を使うことからスタートして、ケアマネさんの提案で杖と靴を用意した。
杖と靴がすぐに届き、さっそく父ハム夫くん(92歳)に試してもらった。新しいものはいやがるかと思ったら、あにはからんや大好評であった。ハタから見ても軽くて持ちやすそうである。
杖を手にした父ハム夫くん(92歳)は「これは、ええの〜」とニコニコしている。
次は靴である。
介護用靴だからヒモで結ぶタイプではなく、脱着が簡単にできるようにマジックテープでバリバリとするものだ。これも気に入ったようでニコニコしている。
デイサービスでは、室内で履き替えるそうなので、色違いでもう一足注文した。
この他、トイレや浴室や玄関の手すり取り付けも新ケアマネから提案があったので、介護用品業者と打ち合わせもする。
父と母の介護ソロ新体制はなかなか好スタートをきったようだ。
今後はソロ活動にいれこみすぎてバンド解散などとならぬように、オーディエンスならぬ遠距離介護者は祈るのだった。
(第86話につづく)
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2018年05月07日

第84話「介護界の人々」

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相変わらず遠距離介護の初心者として、本を読んだり、ネットをチェックしたり、人に聞いたり、情報収集の毎日である。
介護関連の情報は世の中にあふれているが、ボーッとしていては向こうからは何もやってこない。自分で行動を起こさないかぎり進展はないのだ。
最近、耳にして気になっているのが「かかりつけ薬剤師」である。
「かかりつけ医」というのは聞いたことがあるが、「かかりつけ薬剤師」というのは今まで知らなかった。
薬剤師のことは薬剤師にきけと、周りをキョロキョロするが、道行く人のどの人が薬剤師かわからない。
ふと見ると「ココナツ薬局」の看板があった。
おお、ここは第三次遠距離介護ツアーでBROMPTONを貸してくれたココナツ君の実家ではないか。
さっそく中に入る。
ココナツ君は、道楽のようなカフェを隣の市で営んでいるのでこの時間は不在だ。そもそも薬剤師でもないので、今ここにあるボクの疑問には答えられない。
ココナツ君の妹さんが、薬剤師としてこの薬局を経営しているのだ。
何十年ぶりかの対面なのに、挨拶もそこそこに「かかりつけ薬剤師」とは何かと質問を繰り出したのだった。
イメージとしては薬の管理全般をやってくれて、父ハム夫くん(92歳)や母チコちゃん(86歳)のように、薬を飲んだのかどうかも自分でよく判断できないような場合でも、毎日家を訪問して服薬確認をしてくれるというものだった。
しかし、現役の薬剤師であるココナツ妹君が言うには、薬に関することを把握して管理はするが、毎日家に届けて確認することはしないとのことだった。それに、ココナツ薬局は「かかりつけ薬剤師」としては営業はしていないということだった。
それじゃあ、ということで、質問の路線を変更して、父母が住むH県M市の介護事業者の評判をきくことにする。
まずは、今利用している小規模多機能型居宅介護事業所についてきいてみた。
「そこのスタッフさんの悪い評判はききませんが、経営者の評判はあまりよくないですよ」
とのお答えだった。経営者がどう評判が悪いのかききたかったが、なんとなく怖いのでそれ以上は訊かない。
次に、そのうちショートステイでも利用しようと考えているサービス付き高齢者向け住宅についてきいてみた。
返ってきたのは「あそこは高い…」というものだった。そうか高いのか…と妙に納得。
更に、ここに来る前に見かけた、個人病院が併設している居宅介護支援事業所について質問した。
なんとも言えません」との答えがかえってきた。そうか、なんとも言えないのか。
その後も何カ所かの情報を仕入れたが、やはり話だけでは実態の把握にはほど遠いのだった。
ココナツ薬局を出て、帰路にある地域包括支援センターに向かう。
実は、今回の第四次遠距離介護ツアーでは、これまで父母の担当をしてくれた社会福祉士のTさんといまだに連絡がとれていないのだ。出発前にも何度か電話したのだが、スタッフの人はその都度「今日は休んでおります」というばかりなのだった。そんなことを思いつつ歩いていたら、見慣れない番号からiPhoneに着信があった。とりあえず出てみたら、なんと社会福祉士のTさんだった。
「もしもし、個人の番号から失礼します…」といってなんだか元気がない。そして衝撃の発言が!
「実はワタクシ昨日付けで解雇されました。もう業務ではないのですがご挨拶させていただきます…」とTさん。
電話を切ったあともボクの頭の中はクエッションマークだらけだ。
いったいどーゆーことなんだ?解雇だって?
そんなこんなで介護界もいろんなことがあって、あれやこれやいろんなことが起こるんじゃノ〜と、夕陽をあびながら実家を目指すのだった。
帰宅したら、まだ夕方なのに玄関が内側からチェーン錠がかけられていて中に入れない。ここんとこ施錠マニアと化している父ハム夫くん(92歳)の仕業だろう。むなしくチャイムをならし続ける遠距離介護者だった。
(第85話につづく)
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2018年04月30日

第83話「犯人はオレだ!」

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眉間にシワを寄せ「空き巣に入られた!」と母チコちゃん(86歳)が言う。
このところ物忘れがドンドン激しくなり、カバンや財布やカギがしょっちゅうなくなり、常にさがしものをしている母チコちゃんだが、空き巣とは尋常でない。
先日も買い物用のカートがないと騒ぎ出し、あげくに「お父さんが隠した!」と激怒したことがある。結局その日は手ブラで買い物に出かけたのだが、いつも行くスーパーに着いてふと出入り口付近を見たら、なくなったはずのカートが置いてあったのだ。なんのことはない、前回の買い物で、カートを持参したのに、忘れて帰っていたのだった。
しかし今回は空き巣というのだから、ちょっと事態は深刻である。
再度くわしくきいたところ「通帳がない」という。
それなら問題ない。
いや、問題大有りなのだが、とりあえずは問題ないということだ。
そもそもボクの遠距離介護ツアーも、昨年父ハム夫くん(92歳)が通帳をゴミに出してしまったところから始まったのだった。
この通帳ゴミ出し事件をきっかけに、実家から約1時間のところに住む妹U子と協議して、通帳は銀行の貸金庫に預けることにしたのだ。このことは母チコちゃん(86歳)にも言っておいたのだが、今ではすっかり忘れてしまったようだ。
通帳が母の手元から消えたことに関しては、「犯人はオレだ!」とココロの中で自白しておこう。
母チコちゃん(86歳)は「市役所か警察に行く!」と息巻いている。まぁどちらに行っても相手にされないだろうが、金融機関に行ったらちょっと面倒な気がする。というのも「私の年金が入る通帳があるはずじゃ。あったら全額現金にして持っておく」とも言っているからだ。
転ばぬ先の杖で、金融機関に事情を説明しておいたほうがいいかも知れないと考え、さっそく母の口座がある金融機関に出かけた。
金融機関の窓口でスタッフにこれまでのいきさつ伝えたが、あまり興味がないようで椅子にふんぞりかえり、フンフンと気のない相槌をうつばかりだ。「もしご本人様がお見えになられた場合は通帳再発行はできます」などと通り一遍な反応でしかかえってこない。
しかし「そうなったら母は全額引き出すと言ってます」と述べたところ、スタッフの態度が一変して急に前のめりになり、「それは大変ですね」と親身になりはじめたのだった。
その後は、なにやらモニタを見つつ現在の口座の状況等も調べてくれはじめた。とはいってもモニタ画面はこちらには見せてくれない。
ボクが「どうやら複数の口座があるらしいのですが?」ときくと「ご本人様以外にはお伝えできません」と言いつつ、手をこちらに差し出す。
片手は五本指を大きく開いて、片手は一本指である。
最初何のことかわからなかったのだが、どうやら口座数が6口あるということのようだ。
その後も対応策についてあれこれきいたのだが妙案はなかった。
唯一新しい提案は第二連絡先設定というものだ。
連絡先電話番号登録が、最近は固定電話と携帯電話の両方ができるが、実家の両親は携帯電話を持っていないので、今までここが空欄だった。この第二連絡先に妹U子の番号を登録して、金融機関をあとにした。
実家までの帰り道、全額おろされてはたまらないとあせったスタッフの表情を思い出して口元がゆるむのだった。
帰宅したら、母チコちゃん(86歳)は空き巣云々のことはすっかり忘れたようでニコニコしている。
犯人のオレは、しばらくは捕まることはなさそうである。
第84話につづく
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2018年04月23日

第82話「ラ・ラ・ラ・ラッキョがいっぱい」

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前回の第三次遠距離介護ツアー時、母チコちゃん(86歳)の買い物マイブームは豆腐だった。
今回の第四次遠距離介護ツアーで、父母が暮らすH県M市にやってきたら、母チコちゃん(86歳)のマイブームはラッキョになっていた。
スーパーに行くと、まずラッキョを買い、あちこちまわっているうちに再びラッキョを買ってくるのだ。
おかげで冷蔵庫はラッキョだらけだ。
冷蔵庫の野菜室にも、チルド室にも、冷凍室にもラッキョがあふれている。どうしてこんなにラッキョを買い続けるのか母チコちゃん(86歳)にきいたら「お父さんが好きなんじゃ」という。
父ハム夫くん(92歳)は食卓に出されたラッキョを黙々食べているから、嫌いではないのだろうが、そんなに好きとも思えない。母チコちゃん(86歳)の思い込みのような気がしないでもない。
あまりにもラッキョを買うので、母チコちゃん(86歳)が買い物に行っている間に、冷蔵庫内のあちこちに散らばっていたラッキョの小袋をまとめて大きなビニール袋にて入れてみた。
帰宅後コレを見た母チコちゃん(86歳)の言葉がすごかった。
「あら〜お父さんがラッキョが好きなのを知った誰かが、こんなにたくさんのラッキョを冷蔵庫に入れてくれたんじゃね」だって。
どこまで自分中心に考えるんだよ、まったくのところ。
このラッキョ問題のように、自分に関連するものには興味を示すが、それ以外のものには拒否反応を起こすのも母チコちゃん(86歳)の生活態度の特徴だ。例えばボクが買ってきたイングリッシュマフィン、冷凍お好み焼き、レタス、ブロッコリ、ケチャップ、マヨネーズなどは、ちょっと目を離したスキに冷蔵庫から消えてしまった。あるものは電子レンジの中に入れてあったり、あるものは食器乾燥機の中に入れてあったり、ひどい時はゴミ袋の中に捨てられたりしている。
どうしてそんなことをするのかと問いつめたら、「大事なモノのような気がしたので別の所に置いておいたんじゃ」と言い訳をするのだった。
おそらくは、自分で移動したことを忘れてしまっているのだろう。
忘れるといえば食事もそうである。
母チコちゃん(86歳)の場合、食べるのを忘れるのではなく、作った事を忘れるのだ。
夕食をすませてしばらくした時、ふとテーブルを見ると、父ハム夫くん(92歳)の前に、またしても食事の用意がしてある。
どうして食後にまた食事の用意ができるかというと、母チコちゃん(86歳)の食事に関するポリシーによるものなのだ。それは、料理を食べるだけ作るのは寂しいからというものだ。その結果、二人暮らしなのに四人家族分くらいの料理ができてしまい、食後でも食べるものはまだまだあるのだった。
父ハム夫くん(92歳)はもうあまり食べたくないと言いながら、せっかく出されたものに手をつけないのは悪いと思っているような表情で、再び箸を持つのだった。
母チコちゃん(86歳)は「マンマ食べるか?」とまだ言っている。これは、父ハム夫くん(92歳)に言ったのではなく、猫クンに言っているのだ。
猫クンも、そんなにおなかは空いてないようだが、これまた飼い主に気をつかってなのか、少しは食べている。そういえば、父も猫クンも前回の第三次遠距離介護ツアー時よりは太っているようだ。
父と猫クンを見ながら、母チコちゃん(86歳)はニコニコしている。日常のいろんなことはすぐ忘れてしまうが、その表情は多幸感にあふれている。
台所からまたまたラッキョの小皿を持ってきた。この状態では、これからもラッキョを買い続けることだろう。韓国にはキムチ用冷蔵庫があるそうだが、そのうち母チコちゃん用に、ラッキョ冷蔵庫が必要になるかもしれない。
第83話につづく
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posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記