2017年11月29日

第56話「道具が使えない母」

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父ハム夫くん(92歳)も母チコちゃん(86歳)も、まだ自力で歩けるし、自力で食べる事もできる。
しかし、この数ヶ月でめっきり道具類が使えなくなってきている。
母チコちゃん(86歳)は掃除機がうまく使えない。
いや、掃除機そのものが見当たらない。これまで三回の遠距離介護ツアーを挙行したが、その間に一度も掃除機の姿を見かけたことがない。掃除機のかわりに床の上を転がすコロコロみたいなものでごまかしているようだ。
ボク自身、あんまり清潔第一な方ではないが、猫の毛は落ちてるし、ホコリも床の上にたまっているしで、さすがに気になるレベルだ。
身の回りだけでも掃除をしようとしたら、掃除機がどこにもないのだ。
掃除機はどこにあるかを母チコちゃん(86歳)にきいても要領を得ない。
しばらくして、母チコちゃん(86歳)が「これならあるよ」と持ってきたのは布団乾燥機だった。
どこから出してきたのか、掃除機のノズルも手に持っている。
でも布団乾燥機に掃除機のノズルを無理矢理つけても掃除はできない。そもそも径が違うから接続は出来ない。なんとかノズルをつなごうと努力している母チコちゃんの姿は、マルクス兄弟のハーポみたいな動きをしていて、おかしいやら情けないやら、「もういいから」と母チコちゃんのムダな努力をやめさせた。
そのままではどうしようもないので、台所の隅っこにあった小さなホウキとチリトリで最低限の掃除らしきものをしたのだった。
結局、第三次遠距離介護ツアーでボクが滞在している間には掃除機は出てこなかった。
さて、この掃除機問題の後日談。
妹U子が家の中を整理していたら掃除機が二台も出てきたのだ。
もはや、母チコちゃん(86歳)は、道具を自分でどこにしまったのかも思い出せなくなっているようだ。そういえば、マルクス兄弟にはチコという名のメンバーもいたな、などとどうでもいいことを考える遠距離介護者だった。
第57話につづく
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2017年11月27日

第55話「道具が使えない父」

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父ハム夫くん(92歳)も母チコちゃん(86歳)も、まだ自力で歩けるし、自力で食べる事もできる。
しかし、この数ヶ月でめっきり道具類が使えなくなってきている。
父ハム夫くん(92歳)はシェーバーがうまく使えない
実家からクルマで1時間くらいの所に住んでいる妹U子が、多機能と正反対の、ただ剃るだけのシェーバーを持ってきてくれた。
スイッチは上下にスライドしてオンオフを切り替えるだけのシンプルなタイプだ。
でも、この上下スライドの動きが父ハム夫くん(92歳)はできないのだ。
どうやら力まかせに押し込んでいるようだ。
父の手の上にボクが手を添えて上下スライド運動をサポートすると、なんとかできるようになった。スイッチがオンになって、とても嬉しそうな表情の父ハム夫くん(92歳)だった。
気持ち良さそうにヒゲを剃る…剃る…剃る…。もうツルツルになっているのにひたすら剃り続ける…。
飽きるまで剃る。なかなか飽きない…。
やがて、剃り終えてスイッチをオフにしようとするが、どうしてもできない。
また父の手の上にボクが手を添えてスライドする動きをサポートする。
ボクが幼児だった頃、オモチャかなにかの操作がうまくできなくて、父がボクの手をとって教えてくれたことがあったような記憶が蘇るのだった。
翌日、またしても同じ事の繰り返し。
ボクが第三次遠距離介護ツアーで滞在中はこれでいいとして、ボクが帰京した後はどうなるか不安がよぎるのだった。
さて、このシェーバー問題の後日談
ボクが第三次遠距離介護ツアーを終えて帰京した後、妹U子が実家に行ってみたら例のシェーバーがどこにも見当たらなかった。
そこまでは、さもありなんといった感じだが、なんと今まで見た事のない新品の高性能シェーバーが箱に入った状態でテーブルの上にあったのだ。しかし高性能ゆえ使い方がわからなかったようでそのままにしてあったそうだ。充電式なので、使う前にそこでギブアップしたようだ。
さらに数日後、妹U子が実家に行ったら、新品の高性能シェーバーの箱だけがテーブルの上にあり本体がどこにも見当たらないのだった。
大探しの末、血圧計の箱の中にむりやり押し込んであったのを発見したとの連絡があった。
現在、実家に、はたして何台のシェーバーがあるのか、次回の第四次遠距離介護ツアーで発掘してみることにしよう。
第56話につづく
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2017年11月24日

第54話「東京五輪前シンクロ介護」

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父ハム夫くん(92歳)が銀行預金通帳をゴミに出す暴挙から始まった遠距離介護ツアーも約半年が経ち少しは落ち着いてきた。
現在では、通帳関連はボクと妹U子でほぼ把握したので、ものすご〜くメンドーな成年後見人の手続きは、今のところは手を出さなくてすんでいる。
しかし、その後も父ハム夫くんのゴミ出し運動は着実に進化していて、最近のトレンドはゴミの入ったポリ袋ごと、近所に住む親戚のS子さんの畑に埋めてしまうものだ。それを毎日S子さんがチェックして掘り出している。
まさに「権兵衛が種まきゃ」状態である。
悲惨な状況なのに、なぜか笑えてしまう。
主人公の父ハム夫くんが、バスター・キートンばりのクールな表情でいるのがよけいに可笑しい。
いまや父ハム夫くんは金銭関係にもクールでアナーキーだ!どんなに各種税金納付書が届こうと一切無視して払う気なし。そんな書類が、時々部屋のあちこちから出てくるので、その都度ボクが支払いに行くのも、ある意味日常的介護活動といえよう。
固定資産税の第○期分の納付書を発見した時には、すでに納付期限から一ヶ月が過ぎていた。
慌てて金融機関の窓口に行き「これ納付期限過ぎてるので…」と言いつつ納付書を差し出すと、応対した若いスタッフが奥のえらそうな人の所に行ってなにやら相談して戻ってきた。
「このままの金額でいいです!」ときっぱり。
向こうがそういうのならそれでいいのだが、いまだに真相はよくわからない。以前ボクが何かのミスで修正申告した時は、しっかり延滞分を納付した記憶があるのだが。
母チコちゃん(86歳)の日常介護の舞台は台所だ。
料理を作るのがだんだん負担になっているようなので、冷凍食品利用をすすめたが全くその気がない。冷凍室には正露丸の瓶やら、お弁当についている小さい醤油入れとか、冷凍する必要のないものがいっぱい詰まっている。奥の方には何かわからないものがあるようだが、怖いので探索する気にならない。
なぜ冷凍食品を使わないのか何度もきいたら「冷凍食品は不味い!」とのことだった。いったいいつのイメージなんだよ、と言いたいのをこらえて、「確かに昔の冷凍食品は不味いのもあったらしいけど今はそんなことないよ」と言ってみる。当然聞く耳持たずの母チコちゃん(86歳)である。
電灯のスイッチをオンにするのもボクのできるささやかな日常介護だ。
妙に薄暗いな〜と見上げると、台所でも居間でも消灯しているのだ。あれだけテレビやエアコンやガスや水道をつけっぱなし流しっぱなしなのに、とにかく照明のスイッチはすぐにオフにする父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)だ。
きけば「昼間は電気は消すもんじゃ」と言い切る。
う〜ん、そういえば昔は照明は夜しかつけなかったような気もする。そう、裸電球がぶらさがっていた時代の頃だ。
ゴミの話に戻るが、昔は穴を掘って埋めたり、そのへんで焚火をして燃やしたりして、ゴミの分別なんかはなかった。いまや二人の頭の中は60年くらい前の時代の感覚なのだろう。そう東京オリンピックを数年後に控えたあの頃だ。
な〜んだ東京オリンピック前を基準に考えれば、現在とシンクロしているではないか。もしかして二人の頭の中では、アベベやチャスラフスカが生き生きと躍動しているのかも知れない。父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)も生き生きと躍動していたあの頃の時代だ。
第55話につづく
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2017年11月22日

第53話「半漫半介」

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介護離職というものがあるそうだ。
文字通り、介護のために離職するというものである。
遠距離介護の場合、どうしても長期滞在になりがちで、会社勤めだと仕事を続けるのが難しくなるのだろう。
今回の第三次遠距離介護ツアーでは、2週間くらい父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の住む実家に滞在しているが、ボクも周囲からは介護離職者と思われているのかもしれない。
介護離職者に見られても別にかまわないのだが、ずっとマンガ家として過ごしてきて、就職なるものをしたことがないので、そもそも離職ができない。それに、会社勤めだと有給休暇があるが、自由業にあるのは無給休暇だけである。引退してしまえば、いきなり老後生活に突入である。
そこで思いついたのが、マンガ家ならではの半漫半介生活というもの。
朝から晩まで父母につきっきりでもないので、合間をぬって仕事もしてみようと思い、MacBookProと小さなペンタブレットを持参してやって来たのだった。
さて仕事でもするかとMacBookProを手にしたとたん、机がないことに気がついた。しかたがないので、部屋の隅にあったヒーターをはずしたコタツを机替わりにしてみる。
これはとても腰が疲れる。
全然仕事がはかどらない。
それでも、なんとか調子が出てきたと思ったら、いきなりガラッと戸をあけて父ハム夫くん(92歳)が顔を出し、この部屋でコイツは何をしておるのか、といったような表情で、「仕事か…無理するなよ」とねぎらいの言葉をかけてくる。これに応対しているうちに、 なんだか調子が落ちてしまう。
しばらくして、またエンジンがかかってきたと思ったら、再び戸が開いて、今度は母チコちゃん(86歳)が「ゴハン食べるか」ときいてくる。今日は外で食べたから食事はいらないと何回も言ったのに、すっかり忘れているようす。
もう緊張の糸が切れて画面に向かう気にならないので、コピーをとりがてらコンビニに出かけて気分転換することにした。
コピーのついでに夜食を買って、家まで帰ってきたら玄関が施錠してある。何回もチャイムを押して、やっとドアを開けてくれた父ハム夫くん(92歳)がこう言った。
「あれっ、東京に帰ったんじゃなかったのか?」と。
も〜コントみたいな毎日の半漫半介生活なのだった。
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2017年11月20日

第52話「介護サービス生活日常」

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遠距離介護者にとって一番わからないのが、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の日常生活だ。
契約している介護事業所のスタッフが毎日服薬確認に来ているので、一番父母の日常を知っているのだが、一方父母の方はなぜ介護事業所のスタッフが毎日来るのかは全然理解していない。
父母に「昨日は誰が来た?」と問いかけても「さぁ…誰かわからん」との答えしかかえってこない。そもそも顔も名前も覚えていないようだ。
遠距離介護者としては、短期滞在期間中にできるだけ父母の日常を把握しておきたいのだが、こんな会話が続くのでなかなか要領を得ない。
こうなったら、来訪するスタッフさんにきくしかない。
と、ある日の朝、やってきた女性スタッフさんの顔には見覚えがある。3ヶ月前の第二次遠距離介護ツアー時に会った気がするが、どこかが違う。そうだ、あの時はメガネをかけていたので、今と印象がちょっと違ったのだ。
その事を話すと「夜勤明けの時はメガネをかけるんです」との事だった。
なるほど〜ひとつ勉強になったと感心する。何の勉強かはわからないが。
父母の日常をきいたら「ちゃんと薬は飲まれてますよ」とのこと。そう言いながらも口をモグモグしている父ハム夫くん(92歳)の口元を凝視しているのはプロの技か。
他のある日は男性スタッフ。この人にも見覚えがあったが、ヘアスタイルが以前よりだいぶ変化していてすぐにはわからなかった。
「髪切った?」とタモリみたいなことを言ったら、「昨日ファミレス○○にいませんでしたか?」と返ってきた。確かにいた。店内でフリーWi-Fiが使えるらしいので行った店だ。狭いH県M市のことだから、どこで見られているかわかったものじゃない。
またまた他のある日の朝。
この日は数人のスタッフさんがドヤドヤと入ってきた。
おりしも母チコちゃん(86歳)の誕生日で、お祝いに歌のプレゼントとして玄関先で「ハッピーバースデートゥーユー」の合唱。歌う方も、歌われる方もなんとなく気恥ずかしい雰囲気で、歌が終わったときには全体が安堵の胸をなでおろしたのでありました。拍手パチパチ!
歌に続いて、お祝いの色紙もいただき、うれしそうな母チコちゃん(86歳)だった。
今も色紙は部屋に飾ってある。
イラスト入りで、けっこう丹念に手が入った力作である。しかし、よ〜く見たら「誕」の字が誤字だった。
ここの事業所、契約書にも誤字があり指摘したことがある。小さな事は気にせず、おおらかな社風なのかも知れない。
結局、父母の日常生活の詳細はよくわからないのであった。
(つづく)
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