2017年11月20日

第52話「介護サービス生活日常」

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遠距離介護者にとって一番わからないのが、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の日常生活だ。
契約している介護事業所のスタッフが毎日服薬確認に来ているので、一番父母の日常を知っているのだが、一方父母の方はなぜ介護事業所のスタッフが毎日来るのかは全然理解していない。
父母に「昨日は誰が来た?」と問いかけても「さぁ…誰かわからん」との答えしかかえってこない。そもそも顔も名前も覚えていないようだ。
遠距離介護者としては、短期滞在期間中にできるだけ父母の日常を把握しておきたいのだが、こんな会話が続くのでなかなか要領を得ない。
こうなったら、来訪するスタッフさんにきくしかない。
と、ある日の朝、やってきた女性スタッフさんの顔には見覚えがある。3ヶ月前の第二次遠距離介護ツアー時に会った気がするが、どこかが違う。そうだ、あの時はメガネをかけていたので、今と印象がちょっと違ったのだ。
その事を話すと「夜勤明けの時はメガネをかけるんです」との事だった。
なるほど〜ひとつ勉強になったと感心する。何の勉強かはわからないが。
父母の日常をきいたら「ちゃんと薬は飲まれてますよ」とのこと。そう言いながらも口をモグモグしている父ハム夫くん(92歳)の口元を凝視しているのはプロの技か。
他のある日は男性スタッフ。この人にも見覚えがあったが、ヘアスタイルが以前よりだいぶ変化していてすぐにはわからなかった。
「髪切った?」とタモリみたいなことを言ったら、「昨日ファミレス○○にいませんでしたか?」と返ってきた。確かにいた。店内でフリーWi-Fiが使えるらしいので行った店だ。狭いH県M市のことだから、どこで見られているかわかったものじゃない。
またまた他のある日の朝。
この日は数人のスタッフさんがドヤドヤと入ってきた。
おりしも母チコちゃん(86歳)の誕生日で、お祝いに歌のプレゼントとして玄関先で「ハッピーバースデートゥーユー」の合唱。歌う方も、歌われる方もなんとなく気恥ずかしい雰囲気で、歌が終わったときには全体が安堵の胸をなでおろしたのでありました。拍手パチパチ!
歌に続いて、お祝いの色紙もいただき、うれしそうな母チコちゃん(86歳)だった。
今も色紙は部屋に飾ってある。
イラスト入りで、けっこう丹念に手が入った力作である。しかし、よ〜く見たら「誕」の字が誤字だった。
ここの事業所、契約書にも誤字があり指摘したことがある。小さな事は気にせず、おおらかな社風なのかも知れない。
結局、父母の日常生活の詳細はよくわからないのであった。
(つづく)
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2017年11月17日

第51話「二度目の訪問調査」

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いよいよ第三次遠距離介護ツアーのメインエベント、二度目の介護認定訪問調査である。
四ヶ月前の訪問調査は、近所に住む親戚のS子さんと、実家からクルマで1時間の所に住む妹U子に立ち会ってもらったので、ボクが立ち会うのは初めてのことだ。
まさかこんなに早く介護認定区分変更申請という事態になるとは思わなかったというのが正直な気持ちだ。
約束の時刻になってやって来たのは、現在契約中の介護事業所の管理者と担当のケアマネさんの二人だった。たしか五ヶ月前の訪問調査では市から委託された調査員が来たとの事だったが、今回はそうではないということなのか。本日の主人公、母チコちゃん(86歳)は、この二人の事は覚えていないようだ。説明しても「覚えとらんよ」の一言で片付けられた。
まずはお決まりの「今日は何月何日ですか?」から始まる。
ところが今日の母チコちゃん(86歳)は、これまでのテスト時とは違い調子が悪そうで、いきなり「○月○日」と答えるが、月も日もデタラメだった。
たまたまこの週に、母チコちゃん(86歳)の誕生日があったので。次の質問は「誕生日はいつでしたか?」というものだった。
これに対しても「いつだったか…昨日か…」というおぼろげな答えだった。正解は一昨日なのにね〜。
「買い物は一人で行けますか?」の問いには「ハイ!毎日Aストアまで歩いて行ってます」と答える。うむ、これは合ってるぞ、やっと調子が出てきたもよう。
しかしそれに続いて「BBプラザやグリーンモールにも行きます、帰りは荷物があるのでタクシーで帰る事もあります」と言うではないか。ウソつけ〜っ!そんな遠いショッピングセンターにはもう何年も行ってないだろが〜っ!とはボクのココロの声。
受け答えは普通なのでうっかり信じ込んでしまいそうだが、このての作り話というか妄想というか勘違い思い違い前提の会話が頻繁にあるのが、母チコちゃん(86歳)の会話の特徴である。それにしても、帰りはタクシーだなんて妙にリアルなところがある意味すごい。
今の答えは事実ではないですよと、調査中のケアマネさんに目配せでサインを送る。相手もプロだから、このての会話には慣れているようで、こちらにうなずきかえすのだった。
訪問調査終了後、母には別室にひっこんでもらって、ボクとケアマネさんでの打ち合わせ時に、施設の申し込みだけでもしておいたらとの助言があった。
その際ケアマネさんが、母が住む町内にあるサービス付高齢者住宅を例に出したところ、ケアマネさんの横にいた介護事業所管理者が「ウチの系列にも施設があります!」と割り込んで来る。まぁ、営業上は当然の反応である。
う〜む…。
今まで在宅介護の事しか考えていなかったが、施設を検討する段階に入っているのかと、ちょっとショックをおぼえるのだった。
訪問調査を終えて去って行く二人を見送る母チコちゃん(86歳)は、ボ〜ッとした様子で立ちすくんでいる。これまで来客があった時は必ずお茶の用意をしていたのだが、そのようなこともできなくなっているのかもしれない。
さて、この後は介護認定審査会の判断を待つしかない。結果通知は来月くらいということで、とてもそこまでは滞在出来ないが、父母が出来なくなっている雑事をこなすことにしよう。
第52話につづく
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2017年11月15日

第50話「主治医の判断」

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介護認定区分変更訪問調査の前に、母チコちゃん(86歳)の主治医と面談することにした。
その前に例によって認知症診断テスト。
暗算で100から連続して7を引いていく問題にもちゃんと答えている。(いつもは買い物の計算がうまく出来ず、万札で払っておつりをもらい、家には大量のコインがあるのに)
三つのモノを見せられ、しばらく後に「さっきお見せした三つのモノは何?」というテストにも正解を出している。(横でうっかりきいていたボクはひとつはすぐに思い出せなかったのにね)
その他の問題も順調にこなし、テスト結果は例によって高得点をたたき出す母チコちゃんだった。
担当したベテラン看護師さんが言うには「この結果だと現状と同じの支援1でしょうね〜」。
う〜ん、果たして区分変更になるのか。
ところが主治医の意見は違った。
「もう以前のお母さんとはちがうと思ってください、これだと支援ではなく介護認定のレベルですね」というものだった。物忘れが極度に激しくてもテストが高得点ということはあるそうなのだ。
介護認定結果には訪問調査と医師の意見書が重要らしいから、主治医がこういうのなら区分変更はありそうである。
支援から介護になれば受けるサービスも増えるのだろうが、支払額も増えるのが気になる。
せっかくだから、インフルエンザ予防接種の予約もすることにした。
去年もこの医院でしたからというので母チコちゃんに予診表に記入するように言ったが、一人では全然できない。これでは対外的なことは一人ではできないだろう。ましてや今までは対外的な事に関しては防波堤になっていた父ハム夫くん(92歳)が、預金通帳をゴミに出してしまうような暴挙に出る状態になっているのだから、もはや二人だけでの暮らしは成り立たないのではないだろうか。
第一次第二次と比べて、今回の第三次遠距離介護ツアーでの二人の生活の質は急降下で落ちている気がする。
でも、医師に「もう以前のお母さんとはちがう」と言われても、目の前の母チコちゃん(86歳)は以前と同じようにみえるのだった。ただし5分以内に限るのではあるが。5分以上だと、同じ話の無限ループ状態に突入してしまうので、こりゃ以前とは全然違うとわかるんですがね。
第51話につづく
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2017年11月13日

第49話「母チコちゃん高得点」

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今回の第三次遠距離介護ツアーの主目的は、介護認定区分変更訪問調査立ち会いだが、その前に、春に受診した神経内科を母チコちゃん(86歳)と再訪した。
前回の受診で医師がいうには、「認知症診断テストの結果もそんなに悪くないし、まぁ雪が降る季節になる前当たりに来てね」とのことだったので、約半年ぶりだ。
テストというのは、口頭で「今日は何月何日?」などというものと、立体図を実際に書いたりするものの2種類があり、それぞれ30点満点で、前回は20点ちょっとプラスという結果だった。
今回は、母がテストを受ける前に家族問診がある。
スタッフのオネーサンによばれて、ボクだけが別室に通される。
不在者投票で、選挙管理委員会の小太りメガネ男子と密室で二人きりになるのよりは、スタッフのオネーサンと二人きりの方が256倍は楽しい。
母チコちゃん(86歳)の日頃の様子などかなり細かい質問事項にこたえる形式で、思ったより時間がかかった。
問診が終わり、スタッフのオネーサンと並んで廊下を歩いているときにまた質問された。
「お仕事は美術関係ですか?」と。
どうもこれは母チコちゃん(86歳)に関するのではなく、ボク自身に対してのようだ。まぁ大きく言えばマンガ家も美術関係と言えなくもないが、いったいどういう意味合いでの問いなのかわからない。
「なんで?」と聞き返したら「オシャレだから」と返答があった。
その途端、ココロの中で爆笑してしまった。
なぜなら、この日の服装は前日にユニクロで購入したシャツ、カーディガン、パンツだったからだ。それというのも出発した時はまだ夏の名残りがある秋だったのに、父母が暮らすH県M市に来た途端、冬めいた秋になってしまい、薄物の着替えしか持参していなかったので慌ててユニクロに駆け込んで冬物を買ったのだった。
しいてユニクロ以外といえば、ニットのシマシマネクタイをしていたくらいだ。これとて果たしてオシャレといえるものなのかは、判断がわかれるところである。
そうこうしているうちに、母チコちゃん(86歳)のテストも終了。
結果はなんと前回よりもアップして高得点をたたきだしていた。あんなに日常的に物忘れがはげしいのにどういうことなんだろうか。
医師の診断では、現状では認知症とは断定できないようだ。
次回はいつ通院でしょうかと医師にきいたら「う〜ん1年後くらいに」とのこと。別に予約の必要もないし、薬も出ないので、極端なハナシ来たかったらきなさいよ、みたいなニュアンスも感じられる。
ということで、1年後はもっとオシャレして来ようと、固くココロに誓うのだった。
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2017年11月10日

第48話「初めての不在者投票」

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いよいよ、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が暮らすH県M市に向かっての第三次遠距離介護ツアーが始まった。
第三次ともなれば少しは慣れてきたような気もするが、まだまだ初めての事も多い。
今回のソレは選挙の不在者投票。
遠距離介護ツアー日程と、突然の選挙の日程がビミョーにかみあわず、告示前に出発し、帰宅するのは投票日以降の予定なので、期日前投票もできないことが判明した。
そこで登場するのが、初体験の不在者投票
出発前に、第45話「遠距離介護選挙」で述べたような準備をして、いざH県M市へ!
不在者投票の最初のステップは、レターパックプラスで投票用紙がH県M市の実家まで送られてくるのである。
しかし、ここにひとつ問題がある。これまでも何度か書いてきたが、父ハム夫くん(92歳)も母チコちゃん(86歳)も郵便物の管理ができない。レターパックプラスを受け取っても行方不明になる確率が高い。
父ハム夫くんよりも母チコちゃんの方がいくらかはマシなので、なんとか母チコちゃんに受け取ってほしいと願っていたら、願いが通じたのか母チコちゃんが受け取り保管していてくれた。
ほっ。
次はこのレターパックプラス持参でH県M市の選挙管理委員会に出かけて投票である。
さっそくM市役所に行ったが、期日前投票所の案内はあるのに、なかなか選挙管理委員会が見つからない。
最上階の廊下の一番奥にやっとみつけて、カウンターで案内を請う。
不在者投票ですと告げたら、メガネ小太り男子職員に案内されて別室に案内される。投票所というよりも備品置き部屋みたいなところで、指定された椅子に座り、男子職員と二人きりで向き合う。
レターパック内から出した投票用紙について説明があり、それでは記入してくださいとの案内がある。その瞬間、彼は立ち上がり窓際まで進みこちらに背を向けなにやらブツブツ言っている。
記入し終わったら言ってください」と彼が言う。
白いワイシャツの背中を見ながら、まずは小選挙区選出候補者を書く。
書き終わりました」とボクが言う。
彼はやおら振り向き、元いた場所に戻り、ボクの前に再び着席する。
この後、比例代表選出と裁判官国民審査で同じ事を繰り返し、投票用紙を袋に入れて封をして手渡すと、彼がそれらを封筒に入れ「これからあなたの居住地の選管に速達で送ります」と宣言して、儀式のような不在者投票は終わった。
こうして、ボクの1票は無事に選管に届いたはずである。
でも、こんなに手間をかけて投票した選挙の結果がアレですから、ちょっと脱力したのでした。
まぁ、これから続く遠距離介護生活に比べれば、脱力の度合いはたいしたことないですけどね。
第49話につづく
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