2018年05月28日

第87話「デイサービス始末記」

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前回に続き、デイサービス関連のオハナシ。
獣医の、わが父ハム夫くん(92歳)には動物関連がいいんじゃないの、という短絡的発想で、ヤギのいるデイサービスを利用することになった。
最初から1日滞在はむずかしいかもしれないので、まずは短時間のお試しデイサービスと称して、ボクも同伴してデイサービス事業所に向かったのだが、迎えのスタッフが道を間違えるアクシデントがあり、到着した時には既にプログラムが始まっていた。
室内には10名くらいの男女半々くらいの参加者が席についている、
ホワイトボードの前には男性スタッフが立ち「今日は何の日でしょ〜?」とよびかけている。
なんとなく参加者が反応するものの盛り上がりはない。
ちょっと間が空いたところで、スタッフによる父ハム夫くん(92歳)の紹介があり、ホワイトボードに名前が大書される。またしても参加者の反応はあまりない。父ハム夫くんも無表情で椅子についたままだ。
まぁここまで来たということで、とりあえずは第一段階クリアといったところか。
ボクは他のスタッフとデイサービス契約について打ち合わせのため別室に移る、
30分後、スタッフがかけよってきて「お父様が、帰りたいとおっしゃっています」と言う。
あわてて玄関付近に行くと、父ハム夫くんが怒りの表情で憮然としている。1時間もたずにガマンの限界にきたのだろう。
そのとき車椅子の男性が近寄ってきて、父ハム夫くんの名をよんでいる。どうやら昔の仕事関連での知人らしい。今はここに通われているようで、父ハム夫くんも顔見知りがいるほうが今後は来やすいかもしれない。
しかし父ハム夫くんは何も反応せず、ただただ帰りたいというばかりだ。
しかたないので、この日はそこで帰宅することにした。
外に出てクルマに乗り込む前に、スタッフが駐車場の先を指差し「あそこにヤギがいるので、見に行きましょう」と誘うが全くの無視。ヤギ応対作戦は失敗したようだ。
帰りのクルマの中では「最初はいやがってもその後は喜んで通われる方もいますよ」とか「慣れたらお食事や入浴もされると思いますよ」などとスタッフの希望的観測をききながら無言のボクと父だった。
一週間後。
こんどは、お試しではなく正式にデイサービスに行く初日だ。
もちろんボクは同伴せず、父ハム夫くん(92歳)は一人で行くのだ。
迎えが来る前にあれこれチェックをしていたら、玄関先に置いておいた着替え等を入れたデイサービス用バッグが見当たらない。母チコちゃん(86歳)にきくと、最近の彼女の定番である「お父さんが隠した」という返答があった。最近、母チコちゃん(86歳)は自分に関係ないものはどこかにしまっておく傾向が顕著で、今回も家中をいろいろ探したら押し入れの奥にデイサービス用バッグがつっこんであった。
午前9時過ぎにやってきた迎えの女性スタッフが、クルマに乗せようとするが、その前に靴をうまく履かせられなくて苦労する。それでもクルマに乗り込みなんとか出発したのを見送ってひと安心する。
久々にハム夫くんの介護から解放されてゆっくりできそうだ。
自転車で5分くらいのファミレスに行き、ドリンクバーでしばし休憩。
10時半頃、ケアマネから「体操をしたあと、お父様がどうしても帰りたいとおっしゃってますので送っていきました」と着信があり、あわてて家に帰る。
父ハム夫くん(92歳)はすでに居間でなにごともなかったようにテレビを見ている。
というわけでデイサービス初日は早退という結果であった。
一週間後。
第二回目のデイサービス。
迎えのクルマが来ても乗車拒否をする父ハム夫くん(92歳)。
あんなつまらん体操なんかしたくない!」と怒りまくっている。スタッフもあきらめて引き下がるしかなかった。
デイサービスに、だんだん慣れてくるはずが、回を追うごとに拒否反応が激しくなる。
そもそもヤギで関心を引かせようとする試み自体が子供だましじみて間違っていたような気がする。
その後、父ハム夫くん(92歳)は二度とデイサービスに行くことはなかった。
第88話につづく
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2018年05月21日

第86話「ヤギとデイサービス」

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第四次遠距離介護ツアー中にセッティングした、わが父ハム夫くん(92歳)の要介護認定区分変更訪問調査に立ち会った。
日頃はボーッとしていることが多いハム夫くんだが、対外的な面では妙にシャキッとしている。前回の調査でも、訪問者にねぎらいの言葉をかけたりしていたくらいだ。
しかし今回の調査員の「今日は何月何日ですか?」の質問に対して「そんなことはどーでもえー」と答えている。さっきまで新聞を読んでいて「今日は○月○日じゃ」と言っていたのに。
その他の質問も途中からさえぎって「もーそんなことはせんでもえー」と怒り始める。そしておきまりの「もーどーせすぐ死ぬんじゃ、よけいなことはしなさんな」と調査員を追い返そうとする始末だ。
こんな調子だから3週間後くらいに判定される認定結果は、いいはずがない。少なくとも現状の要介護1よりは重くなるだろう。
それまでは新ケアマネさんが立ててくれた暫定プランに沿って介護サービスをうけることにする。
介護用品レンタルに次ぐ介護サービス第二弾は通所介護、いわゆるデイサービスというアレだ。
とはいってもその実態はよくわからない。
ボディに○○デイサービスと書かれたクルマが町中をよく走っているが、実際どんなことをしているのだろうか。
自ら進んで行き楽しむタイプの人もいれば、無理矢理連れて行っても拒否するタイプの人もいるらしい。はたして父ハム夫くん(92歳)はどちらだろうか。大体の想像はつくがダメモトで行ってみることにする。いきなり一人で行くのはハードルが高そうなので、最初はボクも同伴してお試しデイサービスということになった。
さて、その当日。
デイサービスに行く通所介護所からの迎えのクルマがやって来た。
出かけることに対して抵抗するかと思ったら、父ハム夫くん(92歳)はなにごともないようにクルマに乗り込んで行く。あわててボクもクルマに乗り込む。急なことでまだ出かける準備ができていなくて、iPhoneを部屋に忘れてきたのに気付き車外にでようとしたらドアがあかない。迎えの中年女性スタッフが外からドアをあけながら「安全のためこのクルマは内側からドアはあかないんです」と教えてくれる。さすがは介護業者のクルマであるなァと感心する。
現場に向かう道すがら、スタッフさんは運転しながらきょうのデイサービスについてレクチャーしてくれる。
これから行くところには、なんとヤギが数頭飼われているとのこと。元獣医さんだった父ハム夫くん(92歳)なら動物がいるほうがいいのではと、新ケアマネさんがここを選んでくれたのだ。
ヤギが次々と死ぬので獣医さんに往診してもらいたいんですよ〜」とかなり強引な設定をスタッフさんは語りかけるが、父ハム夫くん何も答えず無視して車外の景色を見ている。
そうこうしているうちも、スタッフさんの携帯電話に着信が何度も来る。その都度、運転しながら応答しているのだが、それでいいのだろうか。
こちらの視線を感じたのか「運転中の携帯電話でウチのスタッフが何人も交通取り締まりで捕まったんですよ〜アハハハ〜」と明るく笑うのだった。
「アンタも捕まらないようにね」と心の中で思っていたら、彼女の口からさらに衝撃の発言があった。
「あっ、おしゃべりしすぎて曲がる道をまちがえたみたいです〜」といいつつクルマを走らせる。
父ハム夫くん(92歳)のデイサーサービスは、お試しの段階から文字通り前途多難である。
第87話につづく
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2018年05月19日

【特報】Kindle版KAIGO日和・第1巻リリース!

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Kindle版『KAIGO日和』第1巻の公開がスタートしました!
ある日突然、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の遠距離介護に直面したマンガ家のボクが、驚きあわてふためき、あれこれ考え、だんだん現実を受け入れていく過程を綴った、愛と涙と感動の、ゆるゆる介護ブログ『KAIGO日和』の一部を、大幅に加筆修正した絵と文です。
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2018年05月14日

第85話「二人セットからソロ介護に」

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東京から800キロ離れたH県M市で暮らす、わが父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の遠距離介護がはじまって9ケ月がたった。
当初は、二人をセットとして考えていたので、それぞれにケアマネをつけるよりも一人のケアマネのプランでいったほうがいいのではということになり、小規模多機能型居宅介護事業者と契約した。
この助言をしてくれたのは、地域包括支援センターの社会福祉士のTさんだったが、今回は彼の助言は受けられない。
彼からは先日、地域包括支援センターから突然解雇されたと電話があったのだ。父母の今後も気になるが、彼の今後も気になる。一体なにがあったのだろうか?この遠距離介護生活が始まって以来の一番の謎である。
それはさておき、この9ヶ月で二人の状況も変化したので、介護方針をそろそろ見直してもいい頃ではある。
そこで考えたのが父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)をセットで考えるのではなく、ソロとして扱うことだ。長く一緒に活動していたバンドのメンバーがソロ活動を始めるようなものであろうか。
まずは、これまでより手がかかるようになってきている父ハム夫くん(92歳)が、もっと多様な介護サービスが受けられるようにすべく、区分変更申請をする。要介護認定訪問調査も、今回の第四次遠距離介護ツアー中にできるように手配した。
母チコちゃん(86歳)は今までのケアマネさんでいいとして、父ハム夫くん(92歳)対応の新しいケアマネさんをつけてもらうことにした。
さっそく顔合わせをして暫定プランを作ってもらう。
●通所介護(いわゆるデイサービス)
●ショートステイ(一時的施設入所)
●定期巡回訪問介護看護
介護用品(レンタル&購入)
以上の4本柱が中心である。
まずは介護用品を使うことからスタートして、ケアマネさんの提案で杖と靴を用意した。
杖と靴がすぐに届き、さっそく父ハム夫くん(92歳)に試してもらった。新しいものはいやがるかと思ったら、あにはからんや大好評であった。ハタから見ても軽くて持ちやすそうである。
杖を手にした父ハム夫くん(92歳)は「これは、ええの〜」とニコニコしている。
次は靴である。
介護用靴だからヒモで結ぶタイプではなく、脱着が簡単にできるようにマジックテープでバリバリとするものだ。これも気に入ったようでニコニコしている。
デイサービスでは、室内で履き替えるそうなので、色違いでもう一足注文した。
この他、トイレや浴室や玄関の手すり取り付けも新ケアマネから提案があったので、介護用品業者と打ち合わせもする。
父と母の介護ソロ新体制はなかなか好スタートをきったようだ。
今後はソロ活動にいれこみすぎてバンド解散などとならぬように、オーディエンスならぬ遠距離介護者は祈るのだった。
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2018年05月07日

第84話「介護界の人々」

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相変わらず遠距離介護の初心者として、本を読んだり、ネットをチェックしたり、人に聞いたり、情報収集の毎日である。
介護関連の情報は世の中にあふれているが、ボーッとしていては向こうからは何もやってこない。自分で行動を起こさないかぎり進展はないのだ。
最近、耳にして気になっているのが「かかりつけ薬剤師」である。
「かかりつけ医」というのは聞いたことがあるが、「かかりつけ薬剤師」というのは今まで知らなかった。
薬剤師のことは薬剤師にきけと、周りをキョロキョロするが、道行く人のどの人が薬剤師かわからない。
ふと見ると「ココナツ薬局」の看板があった。
おお、ここは第三次遠距離介護ツアーでBROMPTONを貸してくれたココナツ君の実家ではないか。
さっそく中に入る。
ココナツ君は、道楽のようなカフェを隣の市で営んでいるのでこの時間は不在だ。そもそも薬剤師でもないので、今ここにあるボクの疑問には答えられない。
ココナツ君の妹さんが、薬剤師としてこの薬局を経営しているのだ。
何十年ぶりかの対面なのに、挨拶もそこそこに「かかりつけ薬剤師」とは何かと質問を繰り出したのだった。
イメージとしては薬の管理全般をやってくれて、父ハム夫くん(92歳)や母チコちゃん(86歳)のように、薬を飲んだのかどうかも自分でよく判断できないような場合でも、毎日家を訪問して服薬確認をしてくれるというものだった。
しかし、現役の薬剤師であるココナツ妹君が言うには、薬に関することを把握して管理はするが、毎日家に届けて確認することはしないとのことだった。それに、ココナツ薬局は「かかりつけ薬剤師」としては営業はしていないということだった。
それじゃあ、ということで、質問の路線を変更して、父母が住むH県M市の介護事業者の評判をきくことにする。
まずは、今利用している小規模多機能型居宅介護事業所についてきいてみた。
「そこのスタッフさんの悪い評判はききませんが、経営者の評判はあまりよくないですよ」
とのお答えだった。経営者がどう評判が悪いのかききたかったが、なんとなく怖いのでそれ以上は訊かない。
次に、そのうちショートステイでも利用しようと考えているサービス付き高齢者向け住宅についてきいてみた。
返ってきたのは「あそこは高い…」というものだった。そうか高いのか…と妙に納得。
更に、ここに来る前に見かけた、個人病院が併設している居宅介護支援事業所について質問した。
なんとも言えません」との答えがかえってきた。そうか、なんとも言えないのか。
その後も何カ所かの情報を仕入れたが、やはり話だけでは実態の把握にはほど遠いのだった。
ココナツ薬局を出て、帰路にある地域包括支援センターに向かう。
実は、今回の第四次遠距離介護ツアーでは、これまで父母の担当をしてくれた社会福祉士のTさんといまだに連絡がとれていないのだ。出発前にも何度か電話したのだが、スタッフの人はその都度「今日は休んでおります」というばかりなのだった。そんなことを思いつつ歩いていたら、見慣れない番号からiPhoneに着信があった。とりあえず出てみたら、なんと社会福祉士のTさんだった。
「もしもし、個人の番号から失礼します…」といってなんだか元気がない。そして衝撃の発言が!
「実はワタクシ昨日付けで解雇されました。もう業務ではないのですがご挨拶させていただきます…」とTさん。
電話を切ったあともボクの頭の中はクエッションマークだらけだ。
いったいどーゆーことなんだ?解雇だって?
そんなこんなで介護界もいろんなことがあって、あれやこれやいろんなことが起こるんじゃノ〜と、夕陽をあびながら実家を目指すのだった。
帰宅したら、まだ夕方なのに玄関が内側からチェーン錠がかけられていて中に入れない。ここんとこ施錠マニアと化している父ハム夫くん(92歳)の仕業だろう。むなしくチャイムをならし続ける遠距離介護者だった。
(第85話につづく)
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