2018年06月18日

第90話「初めてのショートステイ」

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H県M市の実家で暮らす父ハム夫くん(92歳)のショートステイ挑戦がいよいよはじまった。
息子としては全面的に応援したいが、その現場に立ち会えないのが離れて暮らす遠距離介護者の弱みである。
しかし、どんな様子なのか非常に気になる。
父を世話しているつもりになっているが、その実態は何もしていない母チコちゃん(86歳)に電話できいても、ちゃんとした状況説明はできないから無理である。
実家の隣に住んでいる親戚のS子さん(75歳)や、ケアマネや、ショートステイのスタッフからの報告を総合して判断するしかない。
そもそもショートステイとは何か?
漢字で書くと、短期入所生活といったところか。
今回のショートステイ先は、同じ市内にある、サービス付き高齢者向け住宅である。略称「サ高住」。介護業界ではさらに略してサツキ(サ付き)というらしいが真偽は不明である。
その「サ高住」に、1泊2日の日程で過ごすのが今回のショートステイだ。
午前10時頃にクルマで家まで迎えに来てくれて、翌日の午後4時頃に家まで送ってくれるスケジュールだ。
1日目。
午前中はどこからも連絡はない。
デイサービスの時も、父ハム夫くん(92歳)が行くのを拒否した場合や、行っても帰ると言い出したときなど、何か問題があった時しか連絡はなかったから、何も連絡はないということは順調に進んでいるのだろうと楽観的に考え、こちらからも連絡はしなかった。
夕方、ケアマネから連絡があった。
それによると、昼食は摂らなかったが夕食は摂ったようで、新聞を読んだり、窓から外を眺めたりして過ごしたということだった。トイレ誘導に入浴は拒否しているらしい。
夜になって、実家からクルマで1時間のところに住んでいる妹U子から連絡があった。
父ハム夫くん(92歳)のことが心配で、ショートステイ先のサービス付き高齢者向け住宅に電話して様子をきいたらしい。ハム夫くんが出された食事に手をつけてなかったことが気になったようだ。ここのところ、食べ過ぎで太り気味の父ハム夫くんだから、1食くらい抜いたって大丈夫だよというボクに、妹U子は不満そうである。
なんだかんだあったようだが、1日目からカンシャクをおこして帰ってしまうという最悪の状況にはなっていないようである。
2日目。
夕方、ショートステイ先のサービス付き高齢者向け住宅スタッフから連絡。
二日目は食事もちゃんと摂ったそうで、無事に送り届けたという報告だった。
これは、初めてのショートステイとしては大成功ではなかろうか。もしかしたら、1日目のお迎えのクルマに乗るのを拒否するのではとも思っていたし、仮にうまく現場についても途中で帰ると言い出さないかと心配していたので、この結果は万々歳である。
ここで問題になるのが、父ハム夫くんがショートステイ中に、実家で一人になってしまう母チコちゃん(86歳)である。
隣に住む親戚のS子さん(75歳)から、コレに関して報告をいただいた。
それによると、母はショートステイに関して事前に説明を受けていたにもかかわらず、全く理解していなかったそうだ。昔のことは覚えていても、新しいことは5分後には忘れてしまう昨今だからしかたないことではあるが。
様子をうかがいにS子さんが家を訪ねて「今夜はハム夫くんはお泊まりよ」と言っても、母は「そんなことは聞いてない」と言っていたそうだ。
再度、様子を見に行った時は「お父さんはいつ帰るんか」と心配していたとのことだ。
今後のショートステイ関連の問題は、父ハム夫くん(92歳)ではなく、母チコちゃん(86歳)かもしれないなァと考え込む遠距離介護者なのだった。
(つづく)
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2018年06月11日

第89話「合鍵にご用心」

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第四次遠距離介護ツアーから無事に生還して数日がたったある夜のこと。
父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が暮らすH県M市の実家の隣に住む親戚のS子さん(75歳)からLINEで連絡があった。
それは、もう夜9時を過ぎているのに一階の電灯がつきっぱなしで、大音量のテレビの音が家の外にも洩れ出し、エアコンの室外機も動いている、というものだった。
普段は、早ければ7時過ぎには消灯してしまう二人の暮らしだから、これはちょっと異常である。
夕方には定期巡回随時対応型訪問介護看護事業所のスタッフが訪れているはずだから、もし家の中で倒れていても、まだ数時間のはずだ。
S子さんが固定電話に電話しても反応がないという。
消灯後は、電話の子機を持って母チコちゃん(86歳)が2階に上がるのが日常なのだが、二階に灯りはついていないらしい。
こんな時のために、S子さんには合鍵を預けてある。
玄関のカギをあけて中に入ろうとしたところチェーン錠がかかっていて入れず、猫クンが出てきただけだったそうだ。
裏口に回って入ろうとしたらカギが合わなくて、ドアがあかなかったとS子さんは言う。この裏口の合鍵は、先日の第四次遠距離介護ツアー中に、母チコちゃん(86歳)が持っていた裏口のカギをコピーして渡しておいたものだ。なぜカギが合わないのかわからない。
S子さんに「このカギでちゃんとあくか確認した?」と問われるが、疲れがピークの第四次遠距離介護ツアー終盤に合鍵を作ったので、そのへんの記憶が曖昧で、確証がない。
そういえば、もうひとつの裏口の合鍵を定期巡回事業所に渡していたことを思い出した。この時はスタッフがドアを開けるのを確認したのをはっきり覚えている。
S子さんにそのことを話したら、24時間対応の訪問看護ステーションに連絡してみるとの提案があった。第四次遠距離介護ツアーからの撤収時に、受付電話番号の記載された用紙のコピーを渡しておいたのだがその番号はスマホに登録してあるという。なんというS子さんのナイスプレー。
S子さんが訪問看護ステーションに連絡したら、合鍵を持って1時間以内にやってくるという。なんとか光明が見えてきた気がする。
約1時間後。
訪問看護ステーションのスタッフとS子さんが、合鍵で裏口から室内に入ったら、父ハム夫くん(92歳)が大音量のテレビの前に座っていた。
いつもより遅くまで起きて、テレビを見ているだけだったのだ。大音量は、耳が遠いのでボリュームを最大にしていただけだった。
しかし、母チコちゃん(86歳)の姿はない。
こちらは、S子さんが二階に上がってみたら大イビキで熟睡していたそうだ。
何故電話に出なかったのかはすぐに判明した。
その夜に限って、母チコちゃんは固定電話の子機を二階に持って上がるのを忘れていたのだ。
あっけない一件落着だったが、訪問看護ステーションの24時間対応システムがちゃんと動いていることが確認できてよかったといえる。
今回は大事にはいたらなかったが、いつ何が起こるかわからない父母の生活だから、いざと言う時の予行演習と思っておくことにする。
一夜明けて、翌朝。
S子さんが、二人の様子を見に行くと、二人は何事もなかったように、朝食を摂っていたそうだ。
「昨夜はたいへんじゃったね」とS子さんが声をかけても反応がない。なんと二人とも昨夜の事件を忘れているのだった。
まァ、たいへんな事は忘れた方が精神衛生上はいいかもしれないから、二人にとっては、これでいいのかも知れない。
数日後、S子さんが持っていた裏口の合鍵でドアがあかなかった原因がわかった。
この日実家からクルマで1時間のところに住んでいる妹U子が実家を訪れ、母チコちゃん(86歳)の持っているカギを確認して判明したのだ。
母チコちゃん(86歳)は裏口のカギを2本持っていて、1本はたしかに裏口のカギだが、もう1本はそうではなかったのだ。訪問看護ステーションに渡したのは、前者のカギをコピーしたスペアキーで、S子さんに渡したのは後者のスペアキーだったのだ。
最後に残った謎は、裏口のカギだと思って母チコちゃんが持っていたカギはどこのカギなのかということだ。
ものごとを整理して説明出来る能力はなくなっている母から、真実を聞き出すのは無理であろう。
これに関して、遠距離介護者のできることはない。たぶんこの謎は永遠に解けない。
第90話につづく
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2018年06月04日

第88話「定期巡回随時対応型訪問介護看護スタート」

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新ケアマネの暫定プランにしたがって、わが父ハム夫くん(92歳)の介護生活は変わりつつある。
介護用品レンタル、デイサービスに続いて、テイキジュンカイズイジタイオウガタホウモンカイゴカンゴのサービスをうけることにした。
漢字で書くと定期巡回随時対応型訪問介護看護だ。
長いので略すとテイジュン(定巡)。
要するに定期巡回随時対応型訪問介護看護事業所のスタッフが定期的に巡回訪問して介護と看護をするサービスである。
具体的には、朝と夕方に看護師さんがやってきて検温と血圧測定する。
測定結果も今まではノートにボールペンで記入していたが、これからはスマホのアプリで記録して主治医と共有していくとのことだ。スタッフが持っているスマホは全部アンドロイドだったからiPhone版アプリがあるのかどうかはわからない。
最初にやってきたスタッフは若い男性だった。
初対面のスタッフに対して、父ハム夫くん(92歳)は素っ気ない態度をとる。しかし、そこはプロだ、いつのまにか会話を始めている。
男性スタッフは「ハム夫さん、いろいろな経験を、僕たち若い者にもいろいろ教えてください」などとヨイショしているようだが、父ハム夫くんは満更でもなさそうだ。
その次の回にやってきたのは、女性スタッフだった。
マスクをしているので表情がよくわからないが、そんなに若くはなさそうだ。といっても父ハム夫くん見ればまだまだ若い部類に入る。
このスタッフは「これからよろしくお願いします」といいながら手を差し出す。父ハム夫くんもつられて思わず手を差し出し握手なんかをしている。
検温と血圧測定だけでなく、着替えや衛生面の管理サービスもあるようだ。
これなら父ハム夫くん(92歳)の健康状態は、少なくとも現状よりはよくなりそうである。
これまでは母チコちゃん(86歳)が面倒を見ていたのだが、その実態はオモラシをした父ハム夫くん(92歳)を罵りブツブツいいながら洗濯するだけというもので、積極的に紙パンツをはかせるでもなく、お尻の引っ掻き傷の軟膏を塗るでなく、なかばほったらかしであった。
事業所のスタッフに、軟膏の入った袋も手渡したら「こんなのも入ってましたが」と言われた。軟膏と一緒に同じくらいの大きさのチューブが入っていた。よく見ると母チコちゃん(86歳)のハンドクリームのようだ。チューブつながりでなんとなく袋に入れたのだろう。どうしてこんなもの入れたの?ときいたら、例によって「お父さんが隠したんじゃ」のオチだ。
ことほどさように、母チコちゃん(86歳)の言動と行動も、日ましにあやふやになっている。
天気の話などのどーでもいー話題なら、何の問題もなく会話が成立するのだが、実務的なことになると全く話にならなくなっている。
父のことも母のことも気になるが、そろそろ帰京する時が来た。
帰る前に業者から渡された、24時間対応の訪問看護ステーションの受付電話番号を書いたA4の紙をコピーして、電話の親機と子機のところにはっておく。
何かあったらいつでもここに電話するんだよ、と母に言っておくが、たぶんしないだろうなァと思う。
念のためコピーした紙を、実家の隣に住む親戚のS子さん(75歳)にも渡しておく。
前回の第三次遠距離介護ツアー撤収時に、実家の玄関を出る時は、父母が外まで出て立って見送ってくれたが、今回の第四次遠距離介護ツアー撤収時にはもうそれもできない状態だった。
父は居間でテレビを見ている。
母は廊下をフラフラ歩いている。
次回の第五次遠距離介護ツアー撤収時にはどうなっているのだろうか、と思いつつ帰路についたのだった。
第89話につづく
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