
父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の二人が暮らす、H県M市の実家の朝は早い。
二人とも季節を問わず日の出とともに起きているようだ。
父ハム夫くんの朝一番の仕事は、朝刊をとりにいくこと。
調子のいい日は新聞を広げて読む。
あんまり調子の出ない日は、広げないで1面だけを眺める。
調子が悪い日はゴミ箱に直行して、新聞を広げる事もなく広告ごと突っ込んでしまう。
その日が新聞紙段ボールなど資源ゴミの日だと、読まないままゴミ集積所に持って行くこともある。
そんな父ハム夫くん(92歳)なのに、休刊日には新聞はとりに行かない。
そこらへんは、妙にちゃんとしているのだった。
朝食は二人ともパン食である。たいていが賞味期限切れである。
それなのに米も炊く。
炊きたてのゴハンはおいしいのに、炊きたては食べない。冷凍して保存するわけでもない。いたずらに時間が過ぎ、冷たいゴハンになっていく。運がよければ、そのうちレンジでチンするが、なぜか茶碗にゴハンが入った状態でトースターに入れられていることもある。そのうちにひからびてゴミになる。
二人とも米には感心が深いようで、父ハム夫くんの口癖は「米炊くか?」である。ほとんど食べないのにね。
昼食はスーパーの弁当と総菜を買う事もある。
それが二人で食べるには多すぎる量でビックリする。
当然食べきれない。
残った食料は台所のあちこちを放浪して、残飯からやがて生ゴミになる。
夕食は、スーパーで買ってきた、これまた食べきれないほどの肉やら魚やらをフライパンで炒める料理のようなものを作る。野菜はほとんど摂らないようだ。いつ作ったのかわからない料理も食卓に並ぶ。
「こんなに食べきれないほど用意する必要はないんじゃない?」と母チコちゃん(86歳)に言ったら「食卓がいっぱいでないと寂しいんじゃ」とのこと。
そうか、食べるために並べているわけではないのか。
それでスーパーに行ってもあんなに大量に食材を買うのかと納得したのだった。
食材はともかく、調味料や油が古いのか、食べると気分が悪くなることも多い。
そうこうしているうちに日没を迎え、風呂に入る事もなく、眠る体制に入る二人。
以前は食後にテレビを見ていたようだが、それもほとんどない。気が向けば見る程度だ。
テレビの前の二人を観察していると、ドラマはストーリーの流れが理解出来ていないようだ。
ニュースは見るが、いつどこで起こったどんなニュースをなのかはわかっていないようで、ただボーッと眺めているだけなのだ。
こんな一日が終わり、早ければ午後6時消灯で床につく父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)だった。
遠距離介護者として実家にやってきたボクも、こんな生活リズムに合わせるしかない。
正直なところ、とても精神的に疲れる。
肉体的にも、出された食事におびえながら食べていて、お腹の調子も悪い。
食器もたくさんあるのに、欠けたり不揃いで、まともなものが少ない。箸も以前はちゃんとしたものが沢山あったはずなのに、なぜかワリバシを何度も洗って使っている。
もう生活のすべてが崩壊しつつあるようだ。
それにしても、こんなに早い時刻には眠れないよ…。三食早寝付き介護生活の夜は、まだまだ更けない。
(つづく)
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