2017年12月25日

第64話「母からの玉手箱」

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第三次遠距離介護ツアーから帰ろうと、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が住む実家を出ようとしたら、母チコちゃんから手のひらにのるくらいのサイズの小箱を手渡された。
帰る間際に謎の小箱だなんて、まるで玉手箱だ。
母チコちゃん(86歳)の説明によると、ボクを産んだ時のヘソの緒が入っているという。
へ〜そ〜」と心の中でつぶやいてみる。
普通、ヘソの緒は桐の箱に入っているものだと思うが、それは化粧品の箱のようで、メーカーのロゴが印字された紙の箱だ。蓋をあけてみると中には茶封筒が折り畳まれている。なんだか意味不明だが、この中にヘソの緒が入っているらしい。
さらに母チコちゃん(86歳)が言うには「アンタのヘソの緒はあったが妹U子のはなかった」そうだ。
どういう意味合いなのかよくわからないが、一刻も早く実家を脱出したいので、とにかく受け取ってポケットに入れる。折からやってきたタクシーに乗り込む。
車内でフーッとため息をついて、今のやりとりは何だったか考えようとしたら、タクシーの運転手さんが話しかける。
話好きそうなオバちゃん運転手だ。
「今のはご両親?おいくつですか?」ときいてくるので、考えるのをやめて答える。
運転手さんは「92歳まできたら100歳までは大丈夫よアハハハ〜」と前を見ないで後部座席を振り返って話し続けるのだった。なんでもこの運転手さんは以前介護施設に勤務していてお年寄りを一杯見てきたので長生きする人のことはわかるんだそうだ。
ふ〜む、100歳と言うとあと8年か…と考えていたら駅に着いた。
JRの車内で再び考える。
そういえば今回の第三次遠距離介護ツアー中に、母チコちゃんが子どもだった頃の古いアルバムも見せられた。
ヘソの緒といい、古いアルバムといい、過去のものを処分し始めているのだろうか。それとも、物忘れが激しくなって家中をしょっちゅう何かを探してまわっているので、その時にたまたま見つけたものなのか、真相はわからない。
いまや時間を超越したような両親だが、時間の波の中で溺れかけているような気もする。
帰宅後あけてみた封筒の中には、漢方薬のような黒いモノが入っていた。たぶんボクのヘソの緒なんだろう。
で、これをどーしろっつーの!
第65話につづく
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posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記
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