2018年08月27日

第100話「父の用意周到」

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急に逝ってしまった父ハム夫くん(92歳)だが、自分がいなくなった後の事を、生前にそれなりに用意はしていた。
寝室のヒキダシに「重要書類入れ」と記したファイルをしまっていたのだ。
几帳面な性格らしく、土地家屋関連書類や、年金関連の通知等が年代順にきちんと整理されていた。しかしボケはじめたこの2年くらいの分は新聞の広告や包装紙みたいなものがまざっていたのだった。
そういえば、亡くなる日の朝のこと。
ベッドに座ったまま、ボクに近くに来いと手招きをしている。
近付いて行くと、足元を指差す父ハム夫くん。
そこにはA4の紙が落ちていた。拾い上げてみると名刺をプリントしたものだ。
その昔、インパクなんてのがムリヤリ行われて、行政主催のパソコン教室なんてのがあった頃、ハム夫くんもこれに参加したことがあったが、その当時にサンプルとして作ったものかもしれない。
このパソコン教室で使われたのは国産のWin機だったのだが、ハム夫くんはその機種と同じものをパソコン教室終了後に購入した。それを後日知ったボクは、なぜ Macにしなかったんだよ〜と激怒したのを覚えている、その時のハム夫くんの鼻白んだ表情が忘れられない。
すまなったかなハム夫くん、Macのことになると瞬間的にあつくなってしまうんだよ、あの時はゴメン。
話は、足元の名刺用紙に戻る。
父ハム夫くんは、その用紙を手に持ちひっくりかえして裏側を指差している。
そこをよく見ると、なにやらボールペンで文字らしきものが何行か書いてあり、そのまわりが丸く囲われている。
やるべきことを書いて、それをまとめて囲って説明しているようだ。
しかし何が書いてあるかは判別不能だ。
ボクが頭をひねっていると、さらに足元を指差している。
そこにはティッシュペーパーが一枚落ちていた。
よく見ると、そのティッシュペーパーにもなにやらボールペンで文字らしきものが何行か書いてある。先ほどの名刺用紙と同じくそのまわりを丸く囲っている。
やはり何かを説明しているのだろう。
コレは何が書いてあるのか訊こうとしたその瞬間、父ハム夫くんは「わかったな?」といった表情でにっこりした後、ティッシュペーパーを顔に近づけてチーンと鼻をかんだのだった。
その後は、ティッシュペーパーを丸めてポイとそのへんに投げ捨てる。
今思うと、あれは遺言のようなものだったのかも知れない。
葬儀はこうやって、残ったものはこうやって分けなさいよ、と書いていたような気がするが、今となっては真相は不明である。
というわけで、初めての相続に右往左往しているのが現状だ。
なかなか手強そうだが、以前やりかけてそのままになってしまった成年後見人のチャレンジよりはなんとかなりそうではある。
まずは、相続関連特集のある日経マネーのバックナンバーでも探すことから始めるとしよう。
父ハム夫くん(92歳)は、葬儀の三日後が93回目の誕生日だった。
今後、父ハム夫くん(93歳)と記す事はない。
第101話につづく
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posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記
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