2018年10月15日

第107話「初めての避難指示」

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毎度の遠距離介護ツアーで、母チコちゃん(86歳)が一人で暮らすH県M市に来ている。
最近はH県M市を訪れるのがだんだん頻繁になり、同じ月に二度も来たりしている。
いったい今回が第何次遠距離介護ツアーになるのかもはや定かではない。
そんでもって、毎度お馴染みの想定外の出来事との遭遇である。
今までのいちばんの想定外は、父ハム夫くん(享年94歳)をミズムシ治療のため皮膚科に連れて行こうとしていた日の朝、急変して帰らぬ人となってしまったことだ。
今回の想定外の出来事も、それに匹敵するくらいのものであった。
それは、遠距離介護で滞在中のH県M市で豪雨災害による避難指示発令が出たことだ。
M市に来てからずっと連日の雨の日が続いていた。
そんな雨天でも、母チコちゃん(86歳)は歩いて数分のスーパーに毎日出かけていく。しかし、昨日は「経験した事のない大雨が降る」という天気予報だったので、介護事業所のクルマで送迎してもらった。
母チコちゃん(86歳)は、それが気に入らなかったようで、本日も「経験した事のない大雨が降る」というのに、この土砂降りの中を、なんといつもより早い時刻に買い物に行って、介護事業所のクルマが来る頃には、すでに買い物から帰宅していたのだった。
まだまだ自分は大丈夫なんじゃ!というアピールなんだろう。
この数日、朝から晩まで土砂降りだが、母チコちゃん(86歳)は耳が遠いので雨音がきこえないようだ。そのせいか連日の気象警報も全然気にしていない。
そんな中、突然の停電
まだ夕方で外も明るく、家の中も真っ暗にはならなかったが、一瞬ビビってしまった。あわてて、家中の懐中電灯をチェックすると、何個かあるもののどれも点灯しない。電池がなかったり、あっても液漏れしたりと使い物にならない。いくつかは電池は入っているものの、二本入りなら一本、四本入りなら三本しか電池が入っていないものがある。
母チコちゃん(86歳)にきいたら、「もったいないから外したんじゃ」とのことだった。
あわてて、お向かいの電気屋さんに乾電池を買いに行き、とりあえず補充しておいた。
1時間後、停電状態は終了した。
防災放送が、水道が出にくくなっているとアナウンスしている。
水の備蓄はあるのかと母チコちゃん(86歳)にきいたら、「そんなもんはない!」と言い切るのであわてて台所にあるヤカンやらナベに水を備蓄する。
こんなときのためにミネラルウォーターを買い置きしておいた方がいいよとすすめたら、「そんな何年も保存出来るような生水はいらん!」とこれまた高らかに拒否宣言。
そうこうしているうちにM市全域に避難勧告が発令された。避難所のアナウンスもされはじめた。それによると実家から徒歩15分程度のコミュニティセンターが避難所らしい。それをきいた母チコちゃん(86歳)は「そんな遠い所には行かん!このへんの避難所はウチの裏の中央病院じゃ!」と言い張るのだった。しかしその中央病院は30年以上前に移転して今は図書館になっているのだ。
グダグダ避難所のことで口論しても仕方ないので、電気も通じて水も出るうちに入浴することにした。風呂場の窓ガラス越しにも雨音が強くなっているのがわかる。
数分後、サッパリして風呂から出たら玄関で物音がする。何かモノでも飛んできたかと思ったら、ずぶぬれの母チコちゃん(86歳)が外から帰ってきたところだった、なんと元中央病院で現図書館に避難出来るか行ってみたとのことだった。その結果は、誰も避難していなかったということだった。避難所ではないのだから、誰も避難していないのは当たり前である。
数時間後、更に雨は強くなり、ついに避難勧告よりも深刻な非難指示が発令された。避難勧告が避難指示になると避難所も増え、前述の元中央病院で現図書館もそのひとつになった。ほらみろ、と自慢げな顔の母チコちゃん(86歳)だった。
不安な一夜が過ぎる。
結局、実際の避難はすることなく、翌日午後には非難指示も解除されたのだが、ほんと、父ハム夫くん(享年94歳)の急逝に匹敵するくらいの想定外の一夜であった。
母チコちゃん(86歳)一人の時に、このような状態になっていたらと想像すると、おそろしくなるが、案外平気で過ごすのかもしれない。一晩中ラジオとネットで情報を収集しつつほとんど眠れなかた息子とちがって、母はいつも通り高いびきで熟睡していたのだから。
時間と空間がうまく認識できなくなっている母チコちゃん(86歳)だが、それが功を奏して、どんな場面でも平常心でのぞめるのかも知れない。
それはそれでいいのではと思える、雨上がりの朝だった。
第108話につづく
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posted by ODA-SAN at 09:00| Comment(0) | 日記
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