2018年05月21日

第86話「ヤギとデイサービス」

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第四次遠距離介護ツアー中にセッティングした、わが父ハム夫くん(92歳)の要介護認定区分変更訪問調査に立ち会った。
日頃はボーッとしていることが多いハム夫くんだが、対外的な面では妙にシャキッとしている。前回の調査でも、訪問者にねぎらいの言葉をかけたりしていたくらいだ。
しかし今回の調査員の「今日は何月何日ですか?」の質問に対して「そんなことはどーでもえー」と答えている。さっきまで新聞を読んでいて「今日は○月○日じゃ」と言っていたのに。
その他の質問も途中からさえぎって「もーそんなことはせんでもえー」と怒り始める。そしておきまりの「もーどーせすぐ死ぬんじゃ、よけいなことはしなさんな」と調査員を追い返そうとする始末だ。
こんな調子だから3週間後くらいに判定される認定結果は、いいはずがない。少なくとも現状の要介護1よりは重くなるだろう。
それまでは新ケアマネさんが立ててくれた暫定プランに沿って介護サービスをうけることにする。
介護用品レンタルに次ぐ介護サービス第二弾は通所介護、いわゆるデイサービスというアレだ。
とはいってもその実態はよくわからない。
ボディに○○デイサービスと書かれたクルマが町中をよく走っているが、実際どんなことをしているのだろうか。
自ら進んで行き楽しむタイプの人もいれば、無理矢理連れて行っても拒否するタイプの人もいるらしい。はたして父ハム夫くん(92歳)はどちらだろうか。大体の想像はつくがダメモトで行ってみることにする。いきなり一人で行くのはハードルが高そうなので、最初はボクも同伴してお試しデイサービスということになった。
さて、その当日。
デイサービスに行く通所介護所からの迎えのクルマがやって来た。
出かけることに対して抵抗するかと思ったら、父ハム夫くん(92歳)はなにごともないようにクルマに乗り込んで行く。あわててボクもクルマに乗り込む。急なことでまだ出かける準備ができていなくて、iPhoneを部屋に忘れてきたのに気付き車外にでようとしたらドアがあかない。迎えの中年女性スタッフが外からドアをあけながら「安全のためこのクルマは内側からドアはあかないんです」と教えてくれる。さすがは介護業者のクルマであるなァと感心する。
現場に向かう道すがら、スタッフさんは運転しながらきょうのデイサービスについてレクチャーしてくれる。
これから行くところには、なんとヤギが数頭飼われているとのこと。元獣医さんだった父ハム夫くん(92歳)なら動物がいるほうがいいのではと、新ケアマネさんがここを選んでくれたのだ。
ヤギが次々と死ぬので獣医さんに往診してもらいたいんですよ〜」とかなり強引な設定をスタッフさんは語りかけるが、父ハム夫くん何も答えず無視して車外の景色を見ている。
そうこうしているうちも、スタッフさんの携帯電話に着信が何度も来る。その都度、運転しながら応答しているのだが、それでいいのだろうか。
こちらの視線を感じたのか「運転中の携帯電話でウチのスタッフが何人も交通取り締まりで捕まったんですよ〜アハハハ〜」と明るく笑うのだった。
「アンタも捕まらないようにね」と心の中で思っていたら、彼女の口からさらに衝撃の発言があった。
「あっ、おしゃべりしすぎて曲がる道をまちがえたみたいです〜」といいつつクルマを走らせる。
父ハム夫くん(92歳)のデイサーサービスは、お試しの段階から文字通り前途多難である。
(つづく)
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2018年05月19日

【特報】Kindle版KAIGO日和・第1巻リリース!

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Kindle版『KAIGO日和』第1巻の公開がスタートしました!
ある日突然、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の遠距離介護に直面したマンガ家のボクが、驚きあわてふためき、あれこれ考え、だんだん現実を受け入れていく過程を綴った、愛と涙と感動の、ゆるゆる介護ブログ『KAIGO日和』の一部を、大幅に加筆修正した絵と文です。
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2018年05月14日

第85話「二人セットからソロ介護に」

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東京から800キロ離れたH県M市で暮らす、わが父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)の遠距離介護がはじまって9ケ月がたった。
当初は、二人をセットとして考えていたので、それぞれにケアマネをつけるよりも一人のケアマネのプランでいったほうがいいのではということになり、小規模多機能型居宅介護事業者と契約した。
この助言をしてくれたのは、地域包括支援センターの社会福祉士のTさんだったが、今回は彼の助言は受けられない。
彼からは先日、地域包括支援センターから突然解雇されたと電話があったのだ。父母の今後も気になるが、彼の今後も気になる。一体なにがあったのだろうか?この遠距離介護生活が始まって以来の一番の謎である。
それはさておき、この9ヶ月で二人の状況も変化したので、介護方針をそろそろ見直してもいい頃ではある。
そこで考えたのが父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)をセットで考えるのではなく、ソロとして扱うことだ。長く一緒に活動していたバンドのメンバーがソロ活動を始めるようなものであろうか。
まずは、これまでより手がかかるようになってきている父ハム夫くん(92歳)が、もっと多様な介護サービスが受けられるようにすべく、区分変更申請をする。要介護認定訪問調査も、今回の第四次遠距離介護ツアー中にできるように手配した。
母チコちゃん(86歳)は今までのケアマネさんでいいとして、父ハム夫くん(92歳)対応の新しいケアマネさんをつけてもらうことにした。
さっそく顔合わせをして暫定プランを作ってもらう。
●通所介護(いわゆるデイサービス)
●ショートステイ(一時的施設入所)
●定期巡回訪問介護看護
介護用品(レンタル&購入)
以上の4本柱が中心である。
まずは介護用品を使うことからスタートして、ケアマネさんの提案で杖と靴を用意した。
杖と靴がすぐに届き、さっそく父ハム夫くん(92歳)に試してもらった。新しいものはいやがるかと思ったら、あにはからんや大好評であった。ハタから見ても軽くて持ちやすそうである。
杖を手にした父ハム夫くん(92歳)は「これは、ええの〜」とニコニコしている。
次は靴である。
介護用靴だからヒモで結ぶタイプではなく、脱着が簡単にできるようにマジックテープでバリバリとするものだ。これも気に入ったようでニコニコしている。
デイサービスでは、室内で履き替えるそうなので、色違いでもう一足注文した。
この他、トイレや浴室や玄関の手すり取り付けも新ケアマネから提案があったので、介護用品業者と打ち合わせもする。
父と母の介護ソロ新体制はなかなか好スタートをきったようだ。
今後はソロ活動にいれこみすぎてバンド解散などとならぬように、オーディエンスならぬ遠距離介護者は祈るのだった。
(第86話につづく)
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2018年05月07日

第84話「介護界の人々」

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相変わらず遠距離介護の初心者として、本を読んだり、ネットをチェックしたり、人に聞いたり、情報収集の毎日である。
介護関連の情報は世の中にあふれているが、ボーッとしていては向こうからは何もやってこない。自分で行動を起こさないかぎり進展はないのだ。
最近、耳にして気になっているのが「かかりつけ薬剤師」である。
「かかりつけ医」というのは聞いたことがあるが、「かかりつけ薬剤師」というのは今まで知らなかった。
薬剤師のことは薬剤師にきけと、周りをキョロキョロするが、道行く人のどの人が薬剤師かわからない。
ふと見ると「ココナツ薬局」の看板があった。
おお、ここは第三次遠距離介護ツアーでBROMPTONを貸してくれたココナツ君の実家ではないか。
さっそく中に入る。
ココナツ君は、道楽のようなカフェを隣の市で営んでいるのでこの時間は不在だ。そもそも薬剤師でもないので、今ここにあるボクの疑問には答えられない。
ココナツ君の妹さんが、薬剤師としてこの薬局を経営しているのだ。
何十年ぶりかの対面なのに、挨拶もそこそこに「かかりつけ薬剤師」とは何かと質問を繰り出したのだった。
イメージとしては薬の管理全般をやってくれて、父ハム夫くん(92歳)や母チコちゃん(86歳)のように、薬を飲んだのかどうかも自分でよく判断できないような場合でも、毎日家を訪問して服薬確認をしてくれるというものだった。
しかし、現役の薬剤師であるココナツ妹君が言うには、薬に関することを把握して管理はするが、毎日家に届けて確認することはしないとのことだった。それに、ココナツ薬局は「かかりつけ薬剤師」としては営業はしていないということだった。
それじゃあ、ということで、質問の路線を変更して、父母が住むH県M市の介護事業者の評判をきくことにする。
まずは、今利用している小規模多機能型居宅介護事業所についてきいてみた。
「そこのスタッフさんの悪い評判はききませんが、経営者の評判はあまりよくないですよ」
とのお答えだった。経営者がどう評判が悪いのかききたかったが、なんとなく怖いのでそれ以上は訊かない。
次に、そのうちショートステイでも利用しようと考えているサービス付き高齢者向け住宅についてきいてみた。
返ってきたのは「あそこは高い…」というものだった。そうか高いのか…と妙に納得。
更に、ここに来る前に見かけた、個人病院が併設している居宅介護支援事業所について質問した。
なんとも言えません」との答えがかえってきた。そうか、なんとも言えないのか。
その後も何カ所かの情報を仕入れたが、やはり話だけでは実態の把握にはほど遠いのだった。
ココナツ薬局を出て、帰路にある地域包括支援センターに向かう。
実は、今回の第四次遠距離介護ツアーでは、これまで父母の担当をしてくれた社会福祉士のTさんといまだに連絡がとれていないのだ。出発前にも何度か電話したのだが、スタッフの人はその都度「今日は休んでおります」というばかりなのだった。そんなことを思いつつ歩いていたら、見慣れない番号からiPhoneに着信があった。とりあえず出てみたら、なんと社会福祉士のTさんだった。
「もしもし、個人の番号から失礼します…」といってなんだか元気がない。そして衝撃の発言が!
「実はワタクシ昨日付けで解雇されました。もう業務ではないのですがご挨拶させていただきます…」とTさん。
電話を切ったあともボクの頭の中はクエッションマークだらけだ。
いったいどーゆーことなんだ?解雇だって?
そんなこんなで介護界もいろんなことがあって、あれやこれやいろんなことが起こるんじゃノ〜と、夕陽をあびながら実家を目指すのだった。
帰宅したら、まだ夕方なのに玄関が内側からチェーン錠がかけられていて中に入れない。ここんとこ施錠マニアと化している父ハム夫くん(92歳)の仕業だろう。むなしくチャイムをならし続ける遠距離介護者だった。
(第85話につづく)
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2018年04月30日

第83話「犯人はオレだ!」

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眉間にシワを寄せ「空き巣に入られた!」と母チコちゃん(86歳)が言う。
このところ物忘れがドンドン激しくなり、カバンや財布やカギがしょっちゅうなくなり、常にさがしものをしている母チコちゃんだが、空き巣とは尋常でない。
先日も買い物用のカートがないと騒ぎ出し、あげくに「お父さんが隠した!」と激怒したことがある。結局その日は手ブラで買い物に出かけたのだが、いつも行くスーパーに着いてふと出入り口付近を見たら、なくなったはずのカートが置いてあったのだ。なんのことはない、前回の買い物で、カートを持参したのに、忘れて帰っていたのだった。
しかし今回は空き巣というのだから、ちょっと事態は深刻である。
再度くわしくきいたところ「通帳がない」という。
それなら問題ない。
いや、問題大有りなのだが、とりあえずは問題ないということだ。
そもそもボクの遠距離介護ツアーも、昨年父ハム夫くん(92歳)が通帳をゴミに出してしまったところから始まったのだった。
この通帳ゴミ出し事件をきっかけに、実家から約1時間のところに住む妹U子と協議して、通帳は銀行の貸金庫に預けることにしたのだ。このことは母チコちゃん(86歳)にも言っておいたのだが、今ではすっかり忘れてしまったようだ。
通帳が母の手元から消えたことに関しては、「犯人はオレだ!」とココロの中で自白しておこう。
母チコちゃん(86歳)は「市役所か警察に行く!」と息巻いている。まぁどちらに行っても相手にされないだろうが、金融機関に行ったらちょっと面倒な気がする。というのも「私の年金が入る通帳があるはずじゃ。あったら全額現金にして持っておく」とも言っているからだ。
転ばぬ先の杖で、金融機関に事情を説明しておいたほうがいいかも知れないと考え、さっそく母の口座がある金融機関に出かけた。
金融機関の窓口でスタッフにこれまでのいきさつ伝えたが、あまり興味がないようで椅子にふんぞりかえり、フンフンと気のない相槌をうつばかりだ。「もしご本人様がお見えになられた場合は通帳再発行はできます」などと通り一遍な反応でしかかえってこない。
しかし「そうなったら母は全額引き出すと言ってます」と述べたところ、スタッフの態度が一変して急に前のめりになり、「それは大変ですね」と親身になりはじめたのだった。
その後は、なにやらモニタを見つつ現在の口座の状況等も調べてくれはじめた。とはいってもモニタ画面はこちらには見せてくれない。
ボクが「どうやら複数の口座があるらしいのですが?」ときくと「ご本人様以外にはお伝えできません」と言いつつ、手をこちらに差し出す。
片手は五本指を大きく開いて、片手は一本指である。
最初何のことかわからなかったのだが、どうやら口座数が6口あるということのようだ。
その後も対応策についてあれこれきいたのだが妙案はなかった。
唯一新しい提案は第二連絡先設定というものだ。
連絡先電話番号登録が、最近は固定電話と携帯電話の両方ができるが、実家の両親は携帯電話を持っていないので、今までここが空欄だった。この第二連絡先に妹U子の番号を登録して、金融機関をあとにした。
実家までの帰り道、全額おろされてはたまらないとあせったスタッフの表情を思い出して口元がゆるむのだった。
帰宅したら、母チコちゃん(86歳)は空き巣云々のことはすっかり忘れたようでニコニコしている。
犯人のオレは、しばらくは捕まることはなさそうである。
第84話につづく
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