2018年07月16日

第94話「わが母チコちゃん、初めての一人暮らし」

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第5次遠距離介護ツアーで、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が暮らすH県M市の実家にやってきた。
今回のメインエベントは、父ハム夫くん(92歳)がサービス付き高齢者向け住宅(略称サ高住、もしくは、サ付き)にショートステイに行っている間の、母チコちゃん(86歳)の状態を確認することだ。
これまで父ハム夫くんは、1泊2日のショートステイを何回か経験して、先日からは2泊3日のショートステイをするようになっている。
そんな父ハム夫くんが不在の間、母チコちゃんの生活はどーなっておるのか謎なのだ。
実家の裏に住む親戚のS子さんや、介護事業所のスタッフなど、周囲の声からすると、母チコちゃんは手持ちぶさたなのか近所の電気屋で2時間もおしゃべりしたり、意味のない掃除やら整理やら、本人は家事だと思っているムダな動きをしているらしい。
たぶん、何をどうしていいのかわからないのだろう。
母チコちゃんは裕福な家の末っ子で、可愛がられ甘やかされて育ち、結婚してからは夫の庇護のもとで社会的なことにはタッチせずぬくぬくと過ごしてきた箱入り婆さんなのだ。家の中のことはともかく、対外的なことは一人では何もできないのが現状だが、いまから自立した女性として生きろというのは無理である。
父ハム夫くんがショートステイで不在な間が、おそらく初めての一人暮らしなのだ。
ちょうど明日から、父ハム夫くん(92歳)の2泊3日のショートステイが始まる。
この2泊3日の間は、母チコちゃん(86歳)は短期未亡人生活にはいるのだ。
順番からいって、いずれは一人暮らしをするようになるであろうから、その日のための予行演習ともいえる。
初めてのおつかいならぬ、母チコちゃん初めての一人暮らしは、果たしてどんな日々なのか。
(つづく)
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2018年07月09日

第93話「謎の女子会」

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父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が暮らすH県M市への遠距離介護ツアーの合間で、二人の様子をさぐるには電話が一番である。カステラが二番なのかはどうでもよい。
来週からの第5次遠距離介護ツアーを前にして、近況を電話できいてみた。
最近元気?という定番に始まって、あれこれ話していると、毎回必ず出て来るのが「市の脳トレ教室に行ってきたよ」というエピソードだ
あまりにも毎回言うものだから、かえって不信感が募り市役所に問い合わせてみたら、たしかに以前は市が主催の脳トレ教室があったらしいが、今はないということだった。
それなのに、母チコちゃんは毎週第一水曜日と第三水曜日に行っているという。
行く時はバスで行く時もあり、調子がよければ歩いて行く時もあるという。帰りに疲れた時はタクシーで帰ることもあるという。実にリアルである。
でもそんな事実はない。
この母が言う「市の脳トレ教室」なるものについて、詳しくきくとメンバーの誕生会やら、お花見やら、はたまた廃線が決まって急に人気が出てきたJRのローカル線に乗りに行ったりしているという。全然「脳トレ教室」の活動ではない。
どちらかというと年輩者の女子会の活動ではないか。
こんなときはインターネット検索である。
とはいっても、こんなハッキリとしない状態で実態にヒットするのは至難の技である。そんな時は画像検索だ。
市の名称、脳トレ、誕生会、廃線などを検索ワードにしてサーチしてみる。
たくさんの画像が表示されるが、その中にバーさんたち数人が、誕生会とかいたカードを持った画像がいくつかあった。その中のひとつに母チコちゃん(86歳)の姿を発見した。画像の置いてあるURLを開いたら、なにかのサークルのサイトだった。主催者はさまざまな活動をしている人らしく、日々の活動をアップされているようだ。その中のコンテンツのひとつに、主催者のお母さんとその友達のグループでランチしたりするものがある。そのメンバーの一人が母チコちゃん(86歳)だった。断片的な情報をつなぎあわせると、このメンバーは以前に市が主宰した脳トレ教室での同期生だったようだ。脳トレ教室が終了したあとも交流が続いて、ランチしたり一緒にどこかに行ったりしているらしい。
まだまだ謎の多い女子会ではあるが、わが母チコちゃんが楽しんでいるのなら、それはそれでいいだろう。
(つづく)
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2018年07月02日

第92話「ハム夫くん要介護3」

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わが父ハム夫くん(92歳)介護認定区分変更結果の書類が届いた。
本来なら、父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が暮らすH県M市の実家に送られるものだが、郵便物受け取り後の管理がうまくできなくなっている二人だから、約800キロ離れた我が家に届くようにケアマネさんが手配してくれたのである。
封筒の中には、通知書と新しい介護保険証が入っている。
おそるおそる開封してみる。
前回の遠距離介護ツアーで立ち会った介護認定区分変更訪問調査の結果は、要介護3だった。
これまでは要介護1だったから、二階級特進であるエッヘン!などというものではない。
さてこれで一段落、ではなく遠距離介護者のやることはまだまだある。
このたび交付された介護保険証でケアマネさんはいろいろ手続きがあるようで、コピーを送ってくれといわれていたのだが、ウチは現在プリンタは使っていないので、コンビニに行ってコピーをとらなければならない。
さらに封筒に入れて切手をはって郵送は、とても面倒臭い。
スキャナーで介護保険証をスキャンして、メールに添付して送ることにした。
しかし、ケアマネの名刺にはメールアドレスはない。
父ハム夫くん(92歳)と母チコちゃん(86歳)が暮らすH県M市だけのことなのかもしれないが、介護関連の人と会って名刺交換してもメールアドレスが記してないことが多い。
ケアマネの名刺にはなかったが、同じ時に顔合わせした介護事業所管理者の名刺にはメールアドレスがあったので、ここ宛にスキャンしたデータをPDFファイルにして送ってみた。
本文なしで、ただファイルを送るのもさみしいので、父ハム夫くん(92歳)の月間介護予定表をPDFファイルにして送ってくれとも書いておいた。
今まで予定表はプリントしたものを手渡されていたのだが、ファイルで送ってもらえば便利である。
数日後…。
介護保険証をスキャンしたデータは、ちゃんと受け取れたとショートメールで返信が届いた。
さらに数日が経過した。
月間介護予定表のPDFファイルは届かない。たぶん、今後も届くことはないだろう。
とにもかくにも、父ハム夫くん(92歳)は要介護3レベル確定した。
これまでよりは、介護サービスも多く受けられるようになるのはよいことだ。もっとも、そのぶん以前よりは費用も多くなるのは、ちょっと困ったチャンである。
第93話につづく
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2018年06月25日

第91話「久々の入浴」

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ニューヨークに行きたいか〜っ!」は、アメリカ横断ウルトラクイズだが、同じようなことを父ハム夫くん(92歳)にも言いたいと前から思っていた。
入浴したいか〜っ!」と。
だんだん日常生活の質を保つことが難しくなっている父ハム夫くん(92歳)だが、そのなかでも以前と大きく変化したのが入浴だ。
遠距離介護生活が始まって数ヶ月がたつが、ボクが見た限りでは、父ハム夫くんはシャワーを何回か浴びただけで、ちゃんと浴槽に入ることはしていないようだ。
しかし長い間入浴していないわりには不潔に見えないし、風呂に入らなくても死ぬことはないだろうが、やっぱり風呂には入ったほうがいいように思える。
そんなわけで、次回の第5次遠距離介護ツアーでは、なんとか入浴させたいと思っていたある日、妹U子からLINEで画像が送られてきた。
ボクと違って、実家からクルマで1時間のところに住む短距離介護者の妹U子は、夫妻で一ヶ月に何回かは実家に行っている。きょうも様子を見に行ったところ、なんと父ハム夫くんが自分からすすんで入浴したというのだ。
送られてきたムービー画像を見ると、父ハム夫くん(92歳)が湯船につかって「あ〜気持ちがえ〜」と本当に気持ち良さそうにしている。
この微笑ましいムービーを何度も見ていたら、あることに気付いた。
浴槽に入った父ハム夫くんの手に何かが握られている。よ〜く見たら、それは杖のようであった。
先日、介護業者でレンタルした杖で、初めて使った日からとても気にいっている杖である。
安定がよくて歩きやすいと言っていたから、お風呂場でも安全のために持って入ったのだろう。
風呂に入らなくなっていたのは、もしかしたら浴室で転倒のおそれがあるので自ら回避していたのかもしれない。
それなら浴室をもっと安全にすれば、もっと入浴する回数が増えるかもしれない。
妹U子と相談して、滑り止めマットを入れることにした。
さらに手スリもつけようと相談していたら、横から母チコちゃん(86歳)が「そんなもんいらん」と言ってきた。
最近どうも母チコちゃんは、介護関連について否定的で、なんでも反対してくる。自分の知らないところで事態が進展していくのが嫌なようである。
入浴に関しては後日さらに進展があった。
それは父ハム夫くん(92歳)の二回目のショートステイのこと。
一回目のショートステイでは拒否した入浴を受け入れたのだ。
もしかしたら、この日の自宅での入浴は、ショートステイでの入浴の予行演習のつもりだったのかもしれない。
ちなみに、この二回目のショートステイでは、食事も完食し、新聞を読んだりテレビを見たりして穏やかに過ごすことができたのだった。
この調子なら、今後のショートステイもうまくいきそうである。
そうそう、ひとつ確認し忘れたことがある。
ショートステイでの入浴時にも杖を持って入ったのだろうか、ということを。
第92話につづく
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2018年06月18日

第90話「初めてのショートステイ」

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H県M市の実家で暮らす父ハム夫くん(92歳)のショートステイ挑戦がいよいよはじまった。
息子としては全面的に応援したいが、その現場に立ち会えないのが離れて暮らす遠距離介護者の弱みである。
しかし、どんな様子なのか非常に気になる。
父を世話しているつもりになっているが、その実態は何もしていない母チコちゃん(86歳)に電話できいても、ちゃんとした状況説明はできないから無理である。
実家の隣に住んでいる親戚のS子さん(75歳)や、ケアマネや、ショートステイのスタッフからの報告を総合して判断するしかない。
そもそもショートステイとは何か?
漢字で書くと、短期入所生活といったところか。
今回のショートステイ先は、同じ市内にある、サービス付き高齢者向け住宅である。略称「サ高住」。介護業界ではさらに略してサツキ(サ付き)というらしいが真偽は不明である。
その「サ高住」に、1泊2日の日程で過ごすのが今回のショートステイだ。
午前10時頃にクルマで家まで迎えに来てくれて、翌日の午後4時頃に家まで送ってくれるスケジュールだ。
1日目。
午前中はどこからも連絡はない。
デイサービスの時も、父ハム夫くん(92歳)が行くのを拒否した場合や、行っても帰ると言い出したときなど、何か問題があった時しか連絡はなかったから、何も連絡はないということは順調に進んでいるのだろうと楽観的に考え、こちらからも連絡はしなかった。
夕方、ケアマネから連絡があった。
それによると、昼食は摂らなかったが夕食は摂ったようで、新聞を読んだり、窓から外を眺めたりして過ごしたということだった。トイレ誘導に入浴は拒否しているらしい。
夜になって、実家からクルマで1時間のところに住んでいる妹U子から連絡があった。
父ハム夫くん(92歳)のことが心配で、ショートステイ先のサービス付き高齢者向け住宅に電話して様子をきいたらしい。ハム夫くんが出された食事に手をつけてなかったことが気になったようだ。ここのところ、食べ過ぎで太り気味の父ハム夫くんだから、1食くらい抜いたって大丈夫だよというボクに、妹U子は不満そうである。
なんだかんだあったようだが、1日目からカンシャクをおこして帰ってしまうという最悪の状況にはなっていないようである。
2日目。
夕方、ショートステイ先のサービス付き高齢者向け住宅スタッフから連絡。
二日目は食事もちゃんと摂ったそうで、無事に送り届けたという報告だった。
これは、初めてのショートステイとしては大成功ではなかろうか。もしかしたら、1日目のお迎えのクルマに乗るのを拒否するのではとも思っていたし、仮にうまく現場についても途中で帰ると言い出さないかと心配していたので、この結果は万々歳である。
ここで問題になるのが、父ハム夫くんがショートステイ中に、実家で一人になってしまう母チコちゃん(86歳)である。
隣に住む親戚のS子さん(75歳)から、コレに関して報告をいただいた。
それによると、母はショートステイに関して事前に説明を受けていたにもかかわらず、全く理解していなかったそうだ。昔のことは覚えていても、新しいことは5分後には忘れてしまう昨今だからしかたないことではあるが。
様子をうかがいにS子さんが家を訪ねて「今夜はハム夫くんはお泊まりよ」と言っても、母は「そんなことは聞いてない」と言っていたそうだ。
再度、様子を見に行った時は「お父さんはいつ帰るんか」と心配していたとのことだ。
今後のショートステイ関連の問題は、父ハム夫くん(92歳)ではなく、母チコちゃん(86歳)かもしれないなァと考え込む遠距離介護者なのだった。
第91話につづく
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